「今回、全29の板金塗装工場でテュフの認証を得られたことで、ビッグモーターの品質が世界基準の板金工場として認められてことになり、他社との徹底化な差別化が図れる」
6月26日、ビッグモーターとテュフ ラインランド ジャパンは共同記者会見を行い、ビッグモーターの全29店舗の板金塗装工場でテュフ ラインランド板金塗装工場認証を取得したと発表。それを受けて、ビッグモーター サービス・PB本部の大賀一哉本部長はこう語った。(経済ジャーナリスト・山田 清志)
テュフ ラインランドの認証は世界的に権威あるものと知られ、その認証を取得したということは世界的に見て良い工場・店舗だと認められたことを意味する。そのため、日本でもその認証を得ようという企業が後を絶たず、毎年挑戦する企業が増えている。しかし、その認証を得るのはなかなか難しいのだ。
例えば、ビッグモーターが今回挑戦した板金塗装工場認証についても、約480の板金塗装工場が挑戦したが、認証を取得できたのは135工場だけ。取得率にして28%だ。日本のディーラーにある工場でもそれを取得できたのはごく一部だという。
「板金塗装認証は、ドイツ本国で設定された監査項目に日本市場で適した項目を追加し、監査を実施するものです。この認証が目指すものを一言で言うと、良い工場を監査、認証することで見える化をすることです。ビッグモーターが2カ月の短期間で全29工場が取得できたことは、本部や工場の人たちの努力の賜だと思います」とテュフ ラインランド ジャパンのトビアス・シュヴァインフルター社長はビッグモーターに敬意を示す。
ここでテュフ ラインランドについて簡単に説明すると、ドイツのケルンに本部を置き、145年の歴史を持つ世界でもトップクラスの第三者検査機関で、電機・電子機器製品、医療機械、産業機械、自動車などさまざまな製品やサービスの検査や認証を行っている。特に自動車分野では、ドイツで運転免許試験を行い、ドイツを含む数カ国で車検サービスを提供している。そのため、ドイツ語で「テュフする」とは運転免許を取りに行く、あるいは車検を取るという意味で使われているそうだ。
一方、ビッグモーターは国産車や輸入車の中古車・新車販売、車両の買い取りに300以上の店舗を持ち、車検、修理、板金塗装、損害保険、リースなど自動車に関するすべてに対応する「ワンストップショッピング型」の店舗を展開している。そのうち、29店舗で板金塗装工場を直営で運営しているわけだが、その数は日本最大級を誇る。
「中古車業界というと、不鮮明なところが多く、消費者にしてみれば、本当に選んでいい商品なのか分からず、それをクリアにする必要があった。それは板金塗装でも同じで、改善の余地があり、透明性を高める必要があった」と大賀本部長はテュフの認証取得に至った経緯を話す。
同社は今後、酒々井店(千葉県)や高松店(香川県)の板金塗装工場を拡張するのをはじめ、山梨県(10月)と北海道(2020年4月)に新たな板金塗装工場をオープンし、5~10年のうちに能力を倍増させる。同時に板金塗装部門の売上高も現在の101億円から5年後には300億円にするという。「板金塗装業界のリーディングカンパニーを目指す」とは大賀本部長の弁だが、今回のテュフ ラインランド認証取得によって、その目標に弾みがつくのは間違いない。
山田清志
経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。