東レ、高熱伝導性を備えた革新PETフィルムを開発


IoT社会、ゼロエミッション社会での各種機器のエネルギー利用効率向上などに貢献

東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣)は、従来の二軸延伸PETフィルムのもつ特性(絶縁性、ハンドリング性、加工性)を保持しつつ、PETフィルムとしては世界最高レベルとなる、従来品比約2.5倍の高い熱伝導率を持つ二軸延伸PETフィルムの開発に成功した。

同社によると今後、開発製品を絶縁材料、電池材料、回路基板など、放熱や熱を伝えることが必要とされる用途へ適用することで、エネルギー利用効率の向上や部材の寿命向上などが期待できると云う。なお現在、パイロットスケールでの技術確立が完了し、ユーザーへのサンプル提供を開始している。

近年、IoT社会の発展とゼロエミッション社会の実現に向け、様々な産業機器で高出力化や安全性向上、工程での生産性向上のために、熱を効率よく伝えることが求められている。

例えば、各種モーターや、風力発電などの発電機、電子・電力機器のケーブル・回路では、高性能化に伴い発生する熱が増加し、その対策が課題となっている。

また電池材料では大容量化や安全性向上のため、温度上昇の抑制や局所発熱の緩和が求められる。

こうした熱対策で一般的な熱伝導性の高い放熱シートや金属などを使用することは絶縁性が低く、使用箇所が限られる。

一方、絶縁部材としてPETフィルムが使われている箇所については、熱を伝えるための対策がとられていないケースも多く存在する。

そのため、通電部周辺の発熱による温度上昇の抑制や、局所発熱の緩和に向けて、絶縁性と高い熱伝導性を両立するPETフィルムの開発に期待が集まっていた。

そんなフィルムの熱伝導性を向上させる施策に於いては、PET中に、絶縁性と共に高い熱伝導性を有する無機粒子を多量に含有させることが有効だと云われてきた。

しかし、無機粒子とPETが接する界面の密着力が低く、延伸時に界面に力が掛かると、剥離が生じて熱伝導性の低い空隙(ボイド)がフィルム中に多数形成されてしまう。そのため、二軸延伸PETフィルムの高熱伝導化はこれまで不可能と考えられていた。

これに対して東レは、新たな粒子表面処理技術により無機粒子とPET樹脂の界面密着力を向上させた。

さらに独自のポリエステル設計技術により、ナノレベルでPETの構造を制御し、二軸延伸時の延伸応力を均一に低減する技術を開発することで、二軸延伸の工程中で、熱伝導の阻害要因となる空隙の発生を大幅に低減させることに成功した。

結果、絶縁性、ハンドリング性、加工性だけでなく、強靱性、耐熱・耐寒性、耐化学薬品性などの優れた特性を有する東レの二軸延伸PETフィルム“ルミラー®”に、新たに熱伝導性を加え、高めることら成功した事で、基材フィルムとして各種産業機器での高出力化や安全性向上、工程フィルムとして生産性向上などに期待が集まっていると云う。

なお同本研究の成果は、2月14日(水)~16日(金)に東京ビックサイトで開催される「nano tech 2018」で発表される予定だ。