住友ゴム工業は(本社:神奈川県平塚市、代表取締役社長:山本悟)は8月29日、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する粉じん(TRWP:Tire and Road Wear Particles タイヤ・路面摩耗粉じん)に対する取り組み成果を国内外の学会で発表した。
上記TRWP(タイヤ・路面摩耗粉じん)の詳細を改めて説明すると、まずTRWPは、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する微細な粉じんで、主にタイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物を指す。
タイヤは自動車部品で唯一路面と直接接触し、車両と乗員の荷重を支えながら「走る(発進する)」「曲がる」「止まる」といった、安全な走行を支える基本的な機能を担っている。
これらの機能を成立させるには、タイヤと路面の間に適切な摩擦が生じていることが不可欠となる。但し自動車の走行に伴いTRWPが(1)発生、環境中に(2)拡散、更に(3)蓄積することで、環境に様々な影響を及ぼす可能性が指摘されている。
TRWPに対するアプローチ
住友ゴム工業では、TRWPの発生から環境中での挙動までを包括的に捉え、外部の研究機関や企業と連携しながら、(1)発生、(2)拡散、(3)蓄積の各段階に焦点を当てた研究を進めているという。その粉塵発生のプロセス毎の研究・解明手法については以下の通り。
(1)発生:TRWPの形成メカニズムの解明
総合的な道路インフラソリューション企業のニチレキグループと協力し、TRWPの発生メカニズムに関する調査を進めている。
一例では、2025年3月に開催された「Tire Technology Expo 2025」および8月に開催された「第30回舗装工学講演会」にて調査手法や構造など、形成メカニズムの解明に重要な情報を得たことを発表した。
同社としては今後も引き続きメカニズムの解明に取り組み、タイヤと路面の両面からアプローチすることで、TRWPの発生を抑制する技術の開発を目指す。
(2)拡散:TRWPの特性解明と拡散抑制の研究
空気力学の専門家であるドイツ・オストファリア応用科学大学のFalk Klinge教授と共同で、走行中のタイヤ周辺に生じる空気の流れを利用したTRWP回収装置の開発に取り組んでいる。
またタイヤのゴム配合や走行条件と、回収されたTRWPの特性との関係を解析することで、拡散の低減につながる知見の確立を進めている。
2025年6月に開催された欧州を中心に開催されているブレーキ技術に関する国際会議・展示会「EuroBrake 2025」で、Klinge教授との共同研究に於いて風洞実験によるタイヤ周辺の空気の流れ(エアロダイナミクス)の可視化に成功したことを発表した。
更にプロトタイプでの実験により、回収装置のコンセプトが実証できた。回収装置は、二重構造になっており、外から風を送り込むことでタイヤと路面近くの風の流れを変えることができる。
実験では、その力を利用し、高効率にTRWPを装置内に回収した。同様の回収装置は前例がなく、同社では当該研究に於ける大きな成果と位置付けている。今後は、今回得られた知見を足掛かりに、実用化に向けた取り組みを進めていくとした。
(3)蓄積:環境中のTRWPとマイクロプラスチックの定量分析
TRWPはマイクロプラスチックの一種として分類されることがある。しかし、その物理的・化学的性質や環境中での挙動には大きな違いがある。
同社では、京都大学大学院の田中周平准教授と共同で、TRWPとマイクロプラスチックを区別して定量分析する手法を開発。
環境中に於けるTRWPおよびマイクロプラスチックの存在量の把握を進めている。またTRWPの拡散や蓄積の予防・抑制に向けた基礎的な知見の確立にも取り組んでいる。
同社は、TRWPが環境に及ぼす影響の解明と低減を重要課題と認識し、タイヤの耐摩耗性を高めることでTRWP発生量の低減に取り組んできた。
そうした背景から現在はTRWPの(1)発生、(2)拡散、(3)蓄積の3段階に着目して調査と研究を進めており、今回は「(1)発生」のメカニズムと「(2)拡散」の抑制に関わる研究について発表した。
同社では今後も、科学的データに基づくアプローチを通じて課題と真摯に向き合い、タイヤメーカーとしての社会的責任を果たすべく、環境負荷の低減に取り組んでいくと話している。
環境負荷低減に向けた取り組み
2024年10月に発表した7つのマテリアリティ(重要課題)のうち、「気候変動」「循環型経済」「生物多様性」を環境に関わる項目として掲げている。
中でも生物多様性については「当社事業は自然資源や化学物質の利用および製品使用の過程で生態系に影響を与えるリスクがある。
そこで同社では、生態系と自然資源の恩恵を将来世代に繋げるため、事業による負の影響を小さくし、生物多様性の保全と回復に努めることを前提に、TRWPに関しても、このマテリアリティに基づき生物多様性への影響の最小化を目指す。
最後に今後に向けて住友ゴム工場は、TRWP自体が未解明な点が多いこと。特に環境への影響は更なる研究と検証が求められていることから、WBCSD傘下のTIP(TIP: Tire Industry Project /グローバルタイヤメーカー10社からなる業界団体)に発足当初より参画している。
そうした実績を活かしTRWPに関する調査研究、評価手法の確立を目指すこと。併せてステークホルダーとの対話などにも積極的に取り組んでいくとしている。
また、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA※6)や一般社団法人日本ゴム工業会(JRMA※7)の一員として、TRWPの評価に関するISO規格の策定にも精力的に関与していいく。
加えて業界団体でのそうした活動に加え、今回の発表内容などを介して独自の研究にも取り組んでいく構え。同社の研究指針としては、科学的データに基づくアプローチを通じてTRWPに関する課題と真摯に向き合い、環境負荷の低減と社会的責任の遂行に努めていくと結んでいる。
<参考>
住友ゴムグループのマテリアリティ:https://www.srigroup.co.jp/sustainability/materiality.html