旭化成エレのDSP、ディラックのオーディオ補正技術に貢献

旭化成エレクトロニクス(AKM/本社:東京都千代田区、社長:篠宮 秀行) は5月19日、自社のオーディオ用デジタルシグナルプロセッサー(オーディオDSP)が、オーディオテクノロジー企業のDirac(ディラック/本社:スウェーデン・ウプサラ市)の音響補正ソフトウェア「AudioIQ」に対応したことを明らかにした。

この連携により、旭化成エレのオーディオDSPを採用する自動車製品で、これまで以上に自然で臨場感溢れるサウンド体験を実現できるようになった上に、車種毎の音響チューニングを含めた開発工数の削減にも貢献できるようになったと謳っている。

ちなみに上記Dirac社は、スウェーデンのウプサラに本社を置く世界的なオーディオテクノロジー企業。デンマークのコペンハーゲンと、インドのバンガロールにR&D施設を構えており、中国、ドイツ、日本、韓国、米国にも拠点を展開している。

そんなDirac社が提供する音響補正技術は、自動車、スマートフォン、ヘッドホン、スピーカーシステムなど、幅広い分野で高い評価を得ており、車内エンターテインメントが重視されるBEVでも採用が進んでいる。併せて最高品質なサウンド体験を追求する世界の企業からも高評価を受けている。

対して旭化成エレのオーディオDSPは、20年以上に亘って累計2億個以上出荷され、自動車等のオーディオ・ボイスソリューションとして広く使用されているという。今回、Dirac社独自のアルゴリズムを活用した高度な音響最適化が可能となったことで、音の透明性や空間表現の向上に更に貢献していけると話している。

フラッグシップオーディオDSP「AK7709」

 

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Dirac社との連携による新たな提供価値は以下の通り
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1.臨場感のある音響環境の提供
フラッグシップオーディオDSP「AK7709」は「AudioIQ」を含めたDirac社の様々な音響補正技術を全て搭載可能。Dirac社の技術を最大限に発揮し、全ての搭乗者に透明性と臨場感あふれるサウンド体験を提供する。

2.開発工数の効率化
Dirac社の高度な半自動チューニング技術は、従来、数か月掛かっていた手動の音響チューニングから大幅な作業工数の削減を実現する。またオーディオDSPの動作については、旭化成エレが技術サポートを行い、迅速なシステム開発を支援する。

3.多彩な音響ソリューションとの相乗効果
旭化成エレが、従来より提供しているオーディオ・ボイスソリューションをDirac社の技術と組み合わせて使用することで、今後は更にその音響効果を向上させることが可能となった。

 

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旭化成エレのオーディオ・ボイスソリューションの一例
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ダイナミックサウンドコントロール:走行中の路面状況や走行環境の変化に応じて音楽や音声のバランスを自動調整し、常に快適で自然な音響空間を維持する。

カラオケ:高音質サウンドによるプライベートカラオケルームを車室内で実現する。それは低遅延でのエコーキャンセル、ハウリング抑制処理を活用したアプリケーションとなっている。

エンジンサウンドクリエイター:オーディオDSPにて、エンジンサウンドを再現して再生する。車速とアクセル開度に連動させることで、エンジンのないBEVであってもV8やV12気筒といった個性豊かなエンジンサウンドを楽しむことが可能できる。

アクティブロードノイズキャンセル: イスラエル・Silentium社との協業によるソリューションで、走行時に路面とタイヤの接触により発生するノイズを逆位相の音で打ち消すことで低減し、静粛性を向上させる。

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最後に今発表に際し、旭化成エレでESプロジェク長を努める藤田 健氏は、「自動車の電動化や自動運転の普及に伴い、車室内の“音”、そして“移動中の過ごし方”はますます重要になります。

一方で、専用のオーディオルームとは異なり、車室内空間では走行時のロードノイズがあり、スピーカーを配置できる場所にも限界があるため、車種ごとのチューニングを含めた音響環境のセッティングは簡単ではありません。

長年の実績がある当社のDSPとDirac社のソフトウェアの組み合わせにより、お客さまの開発・チューニング工数が削減され、エンドユーザーの快適で心地よい移動に貢献できることを期待しています」と述べている。