WEC第7戦・富士、アウディの8号車が今季5回目のポールポジション獲得。0.5秒差に6台の接戦


2番手はポルシェのカー#1、トヨタ陣営はこれに続く3・4番手。さらに5番手アウディ、選手権トップのポルシェ・カー#2は6番手に沈む

FIA世界耐久選手権(WEC)第7戦、LMP1クラス日本ラウンドの予選セッションが10月15日の午後、富士スピードウェイで行われた。

このラウンドでは、ライバルに互して唯一ディーゼルユニットを積んだ「アウディR18」が予選に於いて無敵の強さを見せつけ、今季5回目のポールポジションを獲得した。

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予選首位となったのは、カー#8のルーカス ディ グラッシ選手(ブラジル) / ロイック デュバル選手(フランス) / オリバー ジャービス選手(イギリス)組のアウディR18。

今季、彼らがポールポジションから決勝のスタートを切るのは、メキシコラウンドに続く2度目となるが、今回は、わずか0.025秒という僅差で2番手を抑えた。

そんな富士の予選セッションで気を吐いたディ グラッシ選手は、「アタック開始時点に於いてはタイヤの状態は完璧だったのですが、アタック1周目にトラフィックに引っかかってしまいました。

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しかし、その後のアタック時でも、タイヤの状態が保たれていたことに感謝しています」と予選結果を冷静に分析した。

その後に、チームメイトのロイック デュバル選手がタイムアタックを開始。この際、ディ グラッシ選手のタイムから、さらに記録を切り詰め、結果ポールポジションを獲得に貢献した。

そのデュバル選手は、「すでに予選が始まった時点で、今日は並外れた接戦になるなと予感していました。

そうした想定も踏まえルーカスは、トラフィックに巻き込まれてしまうという不運に見舞われてましたが、私がアタックした時には、その心配は無くなっていました。

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と云うのは今回のポールポジションは、私たちドライバーの力だけではなく、メカニック、エンジニアなどチーム全員が全力で為し得た素晴らしいパフォーマンスによって得られたものだと思っているからです」と喜びのコメントを残している。

そんな彼らに僅差の2番手に食い込んだのは、昨年度、世界チャンピオンを勝ち取ったカー#1のポルシェ919ハイブリッドであった。

同車をドライブしたティモ・ベルンハルト選手(ドイツ)/ブレンドン・ハートレー選手(ニュージーランド)/マーク・ウェバー選手(オーストラリア)組は、ポールポジションを獲得したライバル、カー#8のアウディと距離にして1.4mという差で涙を飲んだ。

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カー#1のポルシェ919ハイブリッドのステアリングを握ったティモ・ベルンハルト選手は予選セッションを終えた際、「言い訳するような必要はまったくありません。我々は必死にアタックしましたし、実際ポールポジション獲得の可能性もありました。

もちろん結果は残念ではありますが、100分の3秒届かなかったということです。マークは2回にわたって完璧なアタックラップを敢行し、 私もいいタイムを出すことができました。

もう一度予選について分析をしたら、決勝レースへ向けて頭を切り替えるべきです。明日こそが本当の勝負なのですから」と語った。

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対して僚友で元F1ドライバーのマーク・ウェバー選手は、「今日のポールポジション争いは、接戦に次ぐ接戦が愉しめた実に素晴らしいものでした。

もちろん我々チームにとって、決して満足のいく結果ではありませんでしたが、ティモも私も自分のベストラップには満足していますし、決勝レースへ向けての準備は整っています」とコメントしている。

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一方、アウディとポルシェに続き最終的に3・4番手に食い込んだTOYOTA GAZOO Racingチームであったが、これまで3戦連続で表彰台を獲得してきた小林可夢偉選手(日本)/ステファン・サラザン選手(フランス)/マイク・コンウェイ選手(イギリス)組のカー#6を筆頭にフリー走行初日から、前戦COTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)から大きく下がった気温・路面温度の影響を受けてタイヤトラブル苦しめられ、カー#5のTS050ハイブリッドが4番手、カー#6が2番手に終わっている。

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続くフリープラクティス2回目のセッションでは、カー#6に電気系トラブルが発生。この際ステアリングを握っていた可夢偉選手はプリウスコーナー手前でマシンを止めることを余儀なくされ、結果、カー#5が5番手、カー#6が6番手と低迷した。

ただ予選結果よりも、決勝レースに注力する今季のトヨタ陣営は、6時間の本戦へ準備を整えつつ、最終的に3・4番手のポジションを得ている。

予選を戦ったトヨタ陣営のドライバーコメントは以下の通り。

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カー#5・中嶋一貴選手、「予想以上の素晴らしい予選で、今季初めてポールポジション争いが出来ました。今日の結果にはとても満足しています。

決勝レースへ向けて更なるセットアップの改良を進め、日本のファンの皆様の素晴らしい応援に報いることが出来ればと思っています。」

カー#5・セバスチャン・ブエミ選手、「我々にとっては今シーズンで最高の予選アタックが出来ました。TS050 HYBRIDでポールポジションにここまで近づけたのは初めてで、とても嬉しく思っています。

ポールまで僅かコンマ2秒差に迫れたことで我々のTS050 HYBRIDの進化をお見せ出来たと思います。明日の決勝レースでも競争力を発揮出来るよう頑張ります。」

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カー#6・小林可夢偉選手、「今朝の公式練習走行では若干車両に不安定さがあり、少々苦戦しましたが、その後チームが素晴らしい仕事で改良を進めてくれたおかげで、予選では全体のベストタイムをマークすることが出来ました。

残念ながらポールポジションには僅かに届きませんでしたが、4番手は悪くない結果ですし、我々はいつも最も重要な決勝レースで予選以上の強さを見せていますので、決勝が楽しみです。」

カー#6・ステファン・サラザン選手「最高の予選バトルでした。私自身は最後のアタックラップで少々攻め過ぎてミスをしてしまいました。

第1セクターは本当に速く、ラップタイム更新を狙えたと思ったのですが、残念ながらラップの最後までそれを持続出来ませんでした。しかし、ポールポジションと僅差の4番手という結果は嬉しく思います。明日の決勝レースでは全力を尽くします。」

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対して予選に於いてカー#7のアウディR18のステアリングを握ったアンドレ ロッテラー選手(ドイツ)と、ブノワ トレルイエ選手(フランス)は、ポールポジションの8号車と0.286秒差しかない好タイムを記録したにも関わらず5番手となってしまった。

これについてロッテラー選手は、「特に大きな問題があったワケではありません。車両はまったくトラブルなく走行していました。

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しかし、8号車と同等のタイムを叩き出せませんでした」と語り、トレルイエ選手は不満そうに「2度も他のマシンに行く手を阻まれ、予選への集中力が途絶えてしまいました。

再び集中してアタックしたものの、ターン15で少しだけベストラインを外してしまった。それが、これ以上のタイムを出せなかった理由です」と述べた。

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しかし当初の想定に最も狂いが生じたのは、6番手となってしまったカー#2のポルシェ919ハイブリッドだろう。彼らはこれまでポイント首位を走り続けてきただけに、決勝を目指してモチベーションアップに余念がない。

ドライバーのニール・ジャニ選手(スイス)は、「今回の予選は我々にとっていいものではありませんでした。

我々はじっくりと分析してなぜこういうことになったか原因を分析する必要があります。

個人的にも完璧なアタックラップを決めることができませんでしたし、マシーンも完璧とはいえませんでした。

いずれにしても明日に向けてすべてが正しく機能するよう確認する必要があります。どんなに厳しいバトルになったとしても、本当に熱い戦いになるはずです」と散々だった予選セッションを振り返っている。

同じ予選セッションに挑戦したマルク・リーブ選手(ドイツ)は、 「6番手グリッドは決して嬉しいものではありません。

カーNo.1のクルーは可能な限りひとつにまとめましたが、我々はそれができませんでした。

今日はエキサイティングな一日でしたがトラフィックに捕まるという不運もありました。しかし各車の差はほんの僅かです。もし0.2~0.3秒でもロスをしたら6番手になってしまう、そういうことです」と決勝に向けての期待を滲ませている。

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今回予選トップを獲得したアウディモータースポーツ代表のDr. ウォルフガング ウルリッヒ氏は予選セッションを締めくくって、「ポールポジションのタイムが向上し、わずかの差に多くのマシンがひしめく、本当に激しい争いの予選となりました。

ポールポジションを獲得したAudi R18の実力が、いかに素晴らしいものであるかをご覧に入れられたとも考えています。

一方、レースは6時間の長丁場ですので、どんなことが待ち受けているかは分かりません。予選の様に、スリリングでいながら我々が勝利出来ると良いと思っています」とチームの働きを称えている。

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またAudi Sport LMPプログラム代表のステファン ドライヤー氏も「ロイック デュバルとルーカス ディ グラッシの両名が素晴らしい走りをしてくれたおかげで、8号車はポールポジションの栄誉を獲得しました。

明日の決勝でも、彼らが大いに活躍してくれることを期待しています」と語っている。

かつてF1日本グランプリの舞台であった富士山の麓に位置する全長4.549kmのサーキットに於ける各車の目標は、マニュファクチュアラー及びドライバータイトルに少しでも近づくことにある。そんな富士6時間レースの決勝は、翌16日・日曜日の11:00にスタートする。

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富士6時間レースの予選結果
1: ディ グラッシ / デュバル / ジャービス (Audi R18) 1m23.570s
2: ベルンハルト / ハートレー / ウェバー (ポルシェ) 1m23.595s
3: ブエミ / デイビッドソン / 中嶋 (トヨタ) 1m23.739s
4: コンウェイ / 小林 / サラザン (トヨタ) 1m23.781s
5: ファスラー / ロッテラー / トレルイエ (Audi R18) 1m23.856s