トヨタ、中南米初のエンジン工場をブラジルにて稼働開始。投資額は約180億円


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「量を求めた工場づくり」から、持続的成長を支える「競争力ある工場づくり」へ、トヨタはモノ造りのスタンスを転換していく

トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男、以下、トヨタ)のブラジルにおける製造・販売会社であるToyota do Brazil LTDA(ブラジルトヨタ 以下TDB)は、中南米地域で初となるエンジン工場を本年2月より稼働を開始し、5月10日(現地時間)に開所式を実施した。

同工場は、同じサンパウロ州で車両を生産するインダイアツーバ工場とソロカバ工場の中間地点にあるポルトフェリス市に位置する。

生産能力は年産10.8万基、従業員数は約320名。投資額は約180億円(約5.8億レアル : 1レアル=31円で換算)、排気量1.3Lと1.5LのNRエンジンを生産し「エティオス」に搭載する。

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トヨタは「持続的に成長し続ける企業」を目指し、「量を求めた工場づくり」から発想を大きく転換し、「競争力のある新しい工場づくり」に取り組んでいる。

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ポルトフェリスエンジン工場においても、本年3月に開所式を行ったTMMIN(インドネシアでの製造会社)のカラワンエンジン工場と同様に、「シンプル&スリム」「フレキシブル」をキーワードに、日本の工場でも導入を進めている革新的生産技術を導入。

その結果、エンジン工場の主要工程(鋳造・機械加工・組み付け)を一つの建屋に集約し、コンパクトで需要変動に強い工場が完成した。工場設備の初期投資部分についても、2008年と比較して約40%低減を達成している。

toyota-started-operation-in-central-and-south-americas-first-engine-plant-in-brazil-investment-of-about-180-billion-yen20160511-98式典でトヨタのセント・アンジェロ専務役員は、「トヨタは持続的に成長し続ける企業を目指しています。

今回のエンジン工場での生産開始は、アルゼンチン、ベネズエラ、およびブラジルでの車両生産と共に、中南米地域の今後の更なる発展に貢献し、トヨタの長期戦略の礎となるでしょう」と述べた。

トヨタは1958年、海外生産の先駆けとしてブラジルに生産事業体であるTDBを設立した。

それ以降、ブラジルのお客様に愛されるクルマづくりを目指し、1959年から2001年までの約40年間で10万台以上の「バンデランテ(ランドクルーザーFJ25Lのブラジル仕様車)」を生産・販売した。

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また、1998年にインダイアツーバ工場を立ち上げ「カローラ」の生産を、2012年にはソロカバ工場の稼働を開始し「エティオス」を生産するなど、ブラジル市場の成長とともに歩んできた。

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加えて今回の取り組みでは、社会貢献活動や環境対策として、マナティーの生息環境保護への支援や、世界最大級の湿原であるパンタナール湿地帯でのスミレコンゴウインコの保護活動の他、サンパウロ州の環境保護エリアに24万5千本の植樹を実施。

新工場の周辺にも、新たに3万5千本の植樹を行うなど、地域に根差した企業市民として積極的な活動に取り組んでいる。

新工場の稼働に際してトヨタでは、「クルマづくりを通じて地域社会に貢献する、という創業以来の理念のもと、ブラジルにおける自動車産業の発展に向け尽力するとともに、ブラジルのお客様にご満足いただける商品を展開していく」と述べている。

中南米地域の工場概要
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TDBの概要

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新工場に於ける導入技術の概要
先の2016年03月07日に、同社がリリースしたカラワンエンジン工場開所時(下の写真)に準じた手元溶解や、無機砂中子など最新の生産技術が導入された。その概要は下記。

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今回のブラジルに於けるエンジン工場と、共通技術を導入したインドネシア・カラワン工場の風景

1.手元溶解
– 概要
・大型部品を鋳造する工程では、大量の溶湯(溶解させた金属)が必要となる。従来、鋳造機から離れた場所にある大型溶解炉で金属を溶かした後、鋳造機へ溶湯を運搬していた。
・これを熱源の改良などにより溶解炉を小型化。鋳造機に直結させた溶解炉で、金属を溶解させる方式(手元溶解)に変更した。

– 効果
・溶湯運搬という危険作業をなくし、安全性が大幅に向上。運搬作業で必要なスペースを、大幅に低減させた。
・溶解炉の小型化に伴う初期投資低減に加え、需要量に応じて溶湯製造量を細かく調節できるため、需要変動に強くなるのが特徴。

2.無機砂中子
– 概要
・鋳造で使用する中子*は、砂に有機物を添加したものを使用しており、有機物が燃焼することでヤニ・臭気が発生していた。

それらを除去するため、大型の集塵機・脱臭機が必要であった。今回、中子の造形性を高める工法を開発したことで、砂に添加する有機物を無機物へ変更した。

*中子(なかご)とは、中に空洞がある鋳物を造る時に空洞にあたる部分として、鋳型の中にはめ込む砂型。
鋳型の中に砂型を入れ、溶湯を流し込んだ後、最後に砂型を崩壊することによって複雑な形状を造る。
中子の精度は重要であり強度、耐熱性、造形性に加えて、崩壊性の良さが要求される。

– 効果
・組み付け工程の不具合原因となるヤニ発生を限りなく抑制でき、集塵機の小型化が可能となった。
・ヤニ清掃などの維持作業を大幅に低減することに加え、ヤニによる火災リスクを大幅に低減させ、工程の安全性向上に寄与している。
・臭気発生がなくなることで、脱臭機が不要となり、初期投資低減に寄与した。