トヨタ自動車、定時株主総会で取締役人事など組織刷新


トヨタ自動車株式会社(本社:愛知県豊田市、社長:豊田章男)は6月14日に定時株主総会を開いて取締役を選任。同総会終了後の取締役会にて代表取締役並びに役付取締役の選定を行った。加えて、役員の昇任と担当変更、基幹職1級の人事異動も実施した。

豊田章男社長は、同総会の壇上で62歳・現在任10年目を迎えた。開口1番にそんな章男氏は、「今や自動車業界は100年に一度の大変革期を迎え、もはやグループ全体で競争力を一層強化しなければ未来はありません。株主の皆さまと一丸となって将来のモビリティー社会を築いていきたいと思います」と詰め掛けた5258人の株主に語りかけた。

また「トヨタの本来の強みであるトヨタ生産方式(TPS)と原価低減を徹底的に磨いて、一日一日必死で生き抜いていきます。また最重点地域である中国での取り組みを強化することを目的に、グループ内に於いて適材適所の人材配置を行います。

加えて従来は、役員ポストとしていた各カンパニー・本部を統括する立場に基幹職1級(部長級)の配置を可能にすることによって、経営に必要となる中長期的な視点や当事者意識を身に付けさせる機会を増やし、若手の抜擢も含めた部長クラスの人材育成につなげていきたいと考えております。

今後もベテラン・若手を問わず、適材適所の考えに基づいた人材配置に対する柔軟性を高め、トヨタの仕事の進め方改革を更に加速していきます」と畳み掛けた。

株主からの事業再編についての不安の声が挙がったことに対しては、「事業再編は、単純な個々の事業の切り離しを行ったのではありません。トヨタの総力を結集し、未来を生き抜くためにこれは必要不可欠なグループ戦略です。

今後は、コネクテッド技術の進化により、バーチャルな世界が大きく広がります。ただバーチャルな世界になればなるほどリアルな世界での積み重ねが大切であり、トヨタには、もっと良い車づくりというリアルな志に加え、バーチャルな取り組みも行っており、これこそが未来に向けたトヨタの強みです」と自社の強みをアピールした。

世界販売に関わる順位の下落については、ディディエ・ルロワ副社長が回答し「今後も着実な成長を目指しており、いたずらに台数を追うつもりはありません」と答えていた。

結果2時間近くに亘った株主総会は、総じて業績や利益還元についての質問もまばらで、好業績を踏まえて役員賞与総額は、前期を30.5%上回る12億2400万円を提案した。

併せて取締役9人の選任等の3議案承認され、前経産事務次官の菅原郁郎氏(61)の他、三井住友銀行の工藤禎子常務執行役員(54)が社外取締役としてトヨタで初の女性取締役となっている。

なお取締役会では来る7月1日から、相談役と顧問を従来の約60人体制から9人に削減することも決めた。これは東京証券取引所が今年から上場企業を対象に、相談役の情報開示を促していることを踏まえて総人員の大幅削減で経営の透明化を求めてのこと。

これにより副社長以上の役員が退任した場合、貢献者に報いるため相談役に4年間、専務以下の役員は1~2年間程度、顧問に就く慣例を廃した。結果、奥田碩相談役(85)や渡辺捷昭顧問(76)は退任。豊田章男社長の実父の豊田章一郎名誉会長(93)、張富士夫相談役(81)、池渕浩介相談役(81)は在任となっている。(坂上 賢治)