トヨタ・モビリティ基金、タイ王国の首都バンコクでの交通渋滞緩和プロジェクトを終了


一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation。以下「TMF」)は、TMF初の助成プロジェクトであるタイ王国の首都バンコクにおける交通渋滞緩和プロジェクトを終了し、4月20日にバンコクにて成果を発表するクロージングセレモニーを開催した。

このプロジェクトは、2015年4月から2017年3月までの期間においてチュラロンコン大学を助成先として実施し、助成総額は1.1億バーツ(約4億円)となっている。

バンコクでもとりわけ渋滞問題が深刻なサトン地区において、交通渋滞緩和に向けて官民学が一体となり取り組んでいくための活動指針作りを目指し「交通需要の調整」と「流量の改善」に関する以下の施策を実施した。

Description:Ploenchit rd Bangkok Thailand / Date 04/02/2008 / Source Own work / Author Franz Golhen

【交通需要の調整】
– パーク&ライドシステムの構築
駅周辺に駐車場を整備し、自家用車から公共交通機関への乗換を促進。

– シャトルバスの運行
地区内の学校2校への送迎を行い、自家用車の送迎による混雑を緩和。

– 情報システムの構築
パーク&ライドの駐車場情報を含め、目的地までの利用可能な交通手段および所要時間等を提示する「交通手段ナビゲーションアプリ」により、様々な交通手段の利用を促進。

– 地区内の企業でのフレックスタイムの導入
通勤時間を分散し、特定の時間帯への交通量の集中を緩和

【流量の改善】
– 交通シミュレーション分析により交通の流れを妨げるボトルネックを特定
駐停車や車線変更の禁止、バス専用レーンの導入等を行い、ボトルネックを改善

– 適切なタイミングでの信号の切り替えを支援するツールの導入
地元警察の協力のもと支援ツールを導入し、信号サイクルを最適化

2016年6月には、二週間の集中社会実装として、上記に加え、センターラインを時間帯によってずらし交通量が多くなる方向の車線を増やすリバーシブルレーンや、交通の流れを妨げていたバス停の位置の移動等の施策を実施し、交通流量の測定を通して各施策の有効性の評価を行った。

交通渋滞の緩和には、地域が主体となって対策を継続することが必要なため、プロジェクトの成果を基に、渋滞緩和に向けて官民学が一体となって取り組んでいくための活動指針となるロードマップを策定し、2月にタイの副首相の諮問機関である交通マネジメントボートにおいて提言した。

TMFの豊田章男理事長(兼 トヨタ自動車(株)代表取締役社長)は、「本プロジェクトが、チュラロンコン大学のリーダシップのもと、バンコク政府、地元警察、そして住民の皆様や多くの地元企業のご理解と多大なご協力によって支えられてきたことに、心より感謝を申し上げる。

地域社会と密接に連携した活動を目指すTMFにとって、地域主体による取り組みに向けてご協力できたことは大変喜ばしく思う。

このプロジェクトを通じて得た多くの学びをTMFの今後の活動に活かし、より良いモビリティ社会の実現に貢献していきたい」と述べた。

チュラロンコン大学の工学部長であるスポット教授は、「本プロジェクトは、移動に関する時間やコストを削減し、エネルギーや環境問題にも配慮した持続可能な新しい都市交通のあり方を探る取り組みである。

交通渋滞の対策には官民学が一体となってそれぞれが持つ知識や技術を活用することが重要であり、今回策定したロードマップによって持続可能なモビリティシステムの1つのモデルケースを示すことができたと考えている。

本プロジェクトへのTMFの支援に、心より感謝を申し上げる」と述べた。

なおTMFは、2014年8月の設立以来、豊かなモビリティ社会の実現とモビリティ格差の解消に貢献することを目的に、ベトナムやインドでの交通手段の多様化や、日本の中山間地域における移動の不自由を解消するためのプロジェクトに助成するなど、世界のモビリティ分野における課題に取り組んでいる。

これを踏まえTMFは、「今後も、トヨタの技術・安全・環境に関する専門知識を活用しながら、大学や政府、NPOや調査研究機関等と連携し、都市部の交通課題の解消、パーソナル・モビリティ活用の拡大、次世代モビリティ開発に資する研究などの取り組みをさらに拡大していく」と結んでいる。