ポルシェ初のEV、車名を「Taycan(タイカン)」に


ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト、社長:オリバー・ブルーメ)はドイツ時間の6月8日、来年にも同社初となる完全電動車(EV)の生産を開始すると改めて発表した。またその新たなシリーズ名を「Taycan(タイカン)」と命名した。

今回、新たな電動車が、このシリーズ名に至ることになった源流は、先の2015年秋、マティアス・ミューラー社長時代にコンセプトカーとして公表したフルエレクトリックドライブの4シータースポーツカー「ミッションE」に行き着く。

ちなみに、このTaycanという車名を生み出すに至った経緯を辿ると、1948年6月8日にポルシェの名を冠した最初のスポーツカーとしてオーストリア(カリンティア地方)・グミュントでうぶ声を上げた「ポルシェ356 No.1 ロードスター」にまで遡らなければならない。

このロードスターには、フォルクスワーゲン社製の1.1リッター空冷式水平対向4気筒エンジンを搭載。最高出力は356用に35PSまで向上させ、車両重量585kg、最高速度は135km/hであった。

この初代356(通称“プリA”)は、センターバーで分割された特徴的な2ピースのフロントウインドウによって、ひと目で認識できる。というのは1952年モデル以降は、中央部が湾曲したシングルピースのフロントウィンドウに変更されたからだ。そしてその後、356シリーズはオープントップモデル(カブリオレ、スピードスター、ロードスター)が導入された。

さて、この時期に誕生したポルシェというブランドだが、今回の新たな車名Taycanは、このポルシェブランド誕生の発端となった紋章に由来している。

同社ブランドの紋章中央には、フェラーリと同じデザインの跳ね馬が描かれており、これはポルシェ誕生の本拠となったシュトゥットガルト市の紋章から引用されたもの。同社は、ここに描かれている『快活な若馬』を称して、新たな電動スポーツカーをTaycanに命名したと云う。

同社CEOのオリバー・ブルーメ氏は、「私たちの新たなEVスポーツカーは、どこまでも縦横無尽に駆け巡ることができるクルマであり、その強さと快活さをこの車名に込めました」と話す。

ちなみに歴代のポルシェ車として命名されてきたこのような車名は、個々の車両に持たせた運動性能並び居住性などの特徴付けと密接に連動したものとなっている。

例えば『ボクスター』は、ボクサーエンジンとロードスターデザインの組み合わせを表したもの。『カイエン』は激しい戦いを勝ち抜く勇者を表しており、『ケイマン』は鋭敏かつ機敏であること。

『パナメーラ』は、1950年から1954年に掛けて中米地域の公道を利用して行われた長距離レース『カレラ・パナメリカーナ・メヒコ』からインスパイアを得て、グランツーリスモ以上のスポーツカーを目指すという意味が込められている。さらに『マカン』はパワーとダイナミクスを連想させるインドネシア地域に生息する虎に由来したものである。

さてそのTaycanであるが、スペックは当初の「ミッションE」発表時のものを引き継いでおり、2つの永久励磁同期電動機(PSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)が発生する出力は600馬力(440kW)以上。この出力で流麗なボディを時速100km /hまで持って行く迄に3.5秒未満。そのままアクセルを踏み続けていけば12秒未満で時速200km /hに到達する。走行距離もNEDC(*新欧州ドライビング・サイクル)準規で500km以上の走行が可能だと云う。

*新欧州ドライビング・サイクルは、欧州地域を走る乗用車の排出ガスや燃費評価に用いられる測定値であり、テスト方法である。運用開始は1992年。Euro(MVEG)1以降に採用され始めたもので、その工程は、冷間始動からの市街地や非市街地の走行モードが組み合わされて算出されるのが大きな特徴だ。

具体的には、シャシ・ダイナモメータ上で市街地走行「ECE-15drivingcycles(0~56km/h)」を4回繰り返した後に、非市街地(高速)走行「EUDC/extra-urbandrivingcycles(70~120km/h)」を1回行う。測定時間は1,180秒、平均速度は33.6km/h。燃費率は「ℓ/100km」で標記される格好だ。なお今回のTaycanの場合が該当する電気自動車の場合、またプラグイン・ハイブリッド車ではNEDCのECER101テスト・サイクルが適応される。

併せて、この新たな車両生産にあたってポルシェは、来る2022年までに、電動技術の発展に60億ユーロ以上を投資すると決め、当初計画していた支出を2倍にする計画を打ち出している。

この追加される30億ユーロのうち、約5億ユーロがTaycanのシリーズモデル拡張に利用されていく予定。この投資に関しては、同社にとって永らく主力工場で有り続けているツッフェンハウゼン(Zuffenhausen)工場に新塗装工場を設け、専用組立セクションを新設、これによって作られる塗装済みボディとドライブユニットを最終組立エリアに輸送するためのコンベアブリッジを目下、精力的に建設している。

また既存のエンジン生産ラインも拡張して電動ドライブの製造工程に適応させる予定だ。これらのTaycanに関わる設備投資によりツッフェンハウゼン工場だけで約1,200人の新規雇用が創出される見込みとしている。なおポルシェエンジニアリンググループGmbH傘下のワークショップ並びに専用の試験施設Weissach Development Center(延べ面積67万㎡以上)への投資もこれに含まれる。

さらに既存製品の電動化やハイブリッド化のために約10億ユーロを投下。その他、生産設備の拡大、インフラ環境の整備、スマートモビリティ社会の実現のために新たな投資が消化される予定である。