パナソニック、車載向け「高耐熱ハロゲンフリー多層基板材料」を製品化


エンジンへの直接搭載など車載ECU用基板の信頼性向上に貢献

パナソニック株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役社長:津賀一宏、以下、パナソニック)と、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(本社:大阪府門真市大字門真1006番、代表取締役社長:伊藤好生)は、車載ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)用基板に適した「高耐熱ハロゲンフリー多層基板材料[品番:R-1566(S)]」を製品化し、来る2017年4月から量産を開始する。

この多層基板材料は、高耐熱性と優れた耐トラッキング性(基板の試験方法<IPC TM650>による示差走査熱量測定<DSC>)の実現で、高温環境下でのECU用基板の信頼性を向上させている。

昨今、自動車の電装化が進み、1台あたりに搭載されるECUの数は増加している。そうしたなか車室空間の広さを維持するため、ECUの多くはエンジンルーム内に搭載されることが多く、これによる高温への耐性が鍵となる。

加えて、ECU自体の高機能化によって、搭載部品そのものの発熱への対応も課題となっている。

またHEV、EV化に伴うECU回路の大電流・高電圧化を背景に、今後、基板材料には、今まで以上の高温耐久性が求められるのは必定だ。しかし一般的に材料の性質から耐熱性と耐トラッキング性を向上させると、基板の加工性が悪くなる。

そこで同社では、車載用途の実績で培ってきた品質をベースに、独自の樹脂設計・配合技術の採用し、高い耐熱性と耐トラッキング性を実現。基板の加工性に優れた「高耐熱ハロゲンフリー多層基板材料」を製品化した。

高耐熱ハロゲンフリー多層基板材料の主な特長
(1)高耐熱性の実現で、高温環境下でのECU用基板の信頼性を向上させた。具体的にはガラス転移温度(Tg)[2]:175℃(DSC) 同社従来材(当社ハロゲンフリー多層基板材料<R-1566>) 148℃。
(2)耐トラッキング性に優れ、大電流・高電圧に対応させている。耐トラッキング(CTI):600V以上達成 当社従来材※2 400V以上600V未満。
(3)高耐熱性と耐トラッキング性を向上させながら<優れた加工性を実現した。

高耐熱ハロゲンフリー多層基板材料の利用用途
車載ECU、車載モジュール、HEV/EVパワーコントロールユニット、DC/DCコンバータ用基板

備考
この材料は、2017年1月18日~1月20日まで東京ビッグサイトで開催される「第18回 プリント配線板EXPO」に出展される。

問合せ先
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 電子材料事業部:https://industrial.panasonic.com/cuif/jp/contact-us?field_contact_group=2201&field_contact_lineup=3248&ad=press20161222 

商品詳細サイト:https://industrial.panasonic.com/jp/products/electronic-materials/circuit-board-materials/halogen-free/hfreer1566s?ad=press20161222 

【詳細説明】
1.高耐熱性の実現で、高温環境下でのECU用基板の信頼性を向上
ECUのエンジンルームへの搭載や、ECUの高機能化による部品の発熱が課題になってきた。

そうした要素を背景に、従来、ECU向けに採用されてきた、ガラス転移温度が140から150℃程度の基板材料では、新たな高耐熱性要求を満たせないケースが増えてきた。

そこで今回、独自の樹脂設計・配合技術の採用により、ガラス転移温度175℃を実現した。高温環境下でのECU用基板の信頼性を向上でき、エンジンへの直接搭載など新たな高耐熱性要求にも対応可能となっている。

2.耐トラッキング性に優れ、大電流・高電圧に対応
HEV、EV化が進み、ECU回路に大電流・高電圧が流れた場合、トラッキングの発生の可能性が高まり、回路の配線がショート(導通)し故障につながるという懸念がある。

市場からは、大電流・高電圧が流れた場合でもショートの発生が抑制出来る耐トラッキング性の高い基板材料が望まれている。

そこで同材料は、当社独自の樹脂設計・配合技術により、CTI (Comparative Tracking Index) 600V以上の耐トラッキング性を達成。さらに大電流・高電圧での高い絶縁信頼性を有しており、ECU回路の大電流・高電圧に対応する。

3.高耐熱性と耐トラッキング性を向上させながら優れた加工性を実現
一般に耐熱性と耐トラッキング性を向上させると基板材料が硬くなり、基板の穴あけ時のドリル加工性が悪くなるという傾向がある。

そうしたなかこの材料では、独自の樹脂配合技術により、高耐熱性と耐トラッキング性を向上させながら、加工性に優れた基板材料を実現した。

これにより、ドリルビット(工具)の長寿命化による加工費削減に貢献する。

【基本仕様】
<品番> ラミネート:R-1566(S)、プリプレグ:R-1551(S)

試験片の厚さは0.8mm。
上記データは当社の実測値であり、保証値ではない。

【用語説明】
(1)耐トラッキング性
プリント配線板の表面が湿ったり汚れたりした状態で、大電流や高電圧を印加した際に、放電によって配線間がショート(導通)する現象をトラッキングと言い、このトラッキングに基板材料が耐える力を指す。

(2)ガラス転移温度(Tg)
高分子材料を、加熱した場合、ガラス状の硬い状態からゴム状に変わる現象をガラス転移といい、その温度をガラス転移温度という。この温度が高いほうが一般に耐熱性に優れる基板材料といえる。