物質・材料研究機構ら、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を改善する電解液を開発


国立研究開発法人物質・材料研究機構のエネルギー・環境材料研究拠点、ナノ材料科学環境拠点、リチウム空気電池特別推進チームの久保佳実チームリーダー。辛星 (XIN Xing) ポスドク研究員、伊藤仁彦主幹研究員らの研究チームは、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する新しい電解液を開発した。

蓄電池 (二次電池) は、電気自動車用電源や、太陽電池で発電された電気をためる家庭用電源として、今後急速に需要が拡大することが予測されている。

特に二次電池の中でも、リチウム空気電池は最高の理論エネルギー密度を有する「究極の二次電池」と言われている。

現状、二次電池として広く使用されているリチウムイオン電池は、蓄電容量に相当するエネルギー密度がほぼ限界に達しており、リチウム空気電池によって、蓄電容量の劇的な向上と大幅なコストダウンが期待できる。

しかしリチウム空気電池は、放電電圧に比べて充電電圧が高いためエネルギー効率が低く、またリチウム金属負極の寿命が短いという大きな課題がある。

今回、研究チームでは、リチウム空気電池のエネルギー効率と寿命を大幅に改善する新しい電解液を開発した。

この電解液により、充電時に正極にかかる過剰な電圧 (過電圧) が、従来の1.6 V以上から半分以下の約0.6 Vとなり、エネルギー効率が60%程度から77%まで大きく改善した。

さらに、寿命低下の一因とされていたリチウム金属の樹枝状の析出も防止することで、従来20回以下であった充放電サイクルの寿命が50回以上まで大幅に向上した。

今後、この成果を活用し、電気自動車や家庭用蓄電地に向けた大容量、長寿命なリチウム空気電池の早期実用化を目指していく。

なおこの研究は、文部科学省委託事業「ナノテクノロジーを活用した環境技術開発プログラム (~平成27年度) ・統合型材料開発プログラム (平成28年度~) 」並びにJST先端的低炭素化技術開発・特別重点技術領域「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING)の支援を受けて行われた。

また研究成果は、ACS Applied Materials & Interfaces誌のオンライン版にて現地時間2017年7月17日に掲載された。

「サイクル試験後のリチウム金属負極の断面観察。(a) 従来電解液、(b) 新電解液」の画像