神戸製鋼所の水素ステーション向けコンパクト熱交換器「DCHE」がISSFの銀賞獲得


日本冶金工業株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:木村 始、以下、日本冶金工業)と、株式会社神戸製鋼所(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長:川崎博也、以下、コベルコ)の製品「DCHE」が、ISSFが主催するニューアプリケーション賞「新技術」分野で「銀賞」を獲得した。

「水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器(製品名:DCHE)」本体

これは両社による「水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器(製品名:DCHE)」で、日本冶金工業が素材となるステンレス鋼を提供し、神戸製鋼が製品化したもの。

ISSFは昨月、東京・丸の内のシャングリ・ラホテル東京にて第21回年次総会を開催し、その際に表彰式が執り行われた。なお日本冶金工業は2回目の受賞、神戸製鋼は初受賞となった。

ディスペンサー内に設置されたDCHE(神戸製鋼/高砂製作所内、水素ステーション総合テストセンターに設置)

今回受賞した「水素ステーション向け拡散接合型コンパクト熱交換器」DCHE(Diffusion bonded Compact Heat Exchanger)は、主に水素ステーション向け熱交換器として、日本冶金工業から素材の供給を受けた神戸製鋼が、50年以上に及ぶ熱交換器に関する技術を元に、2012年に開発・製品化した。

その構造は、強度・耐水素脆化性の観点から、構成素材きステンレス鋼を採用。

製品の主な特長は、ステンレスのプレートに幅1~2㎜の微細な流路を加工、積層し拡散接合する事(※1)で、一般的な熱交換器である2重管式(※2)と比較し、広い伝熱面積(約5倍の1,000m2/m3)、コンパクト性(約1/100サイズ)と超高圧への耐性(100MPa)を実現した高性能かつコンパクトな熱交換器となった。

(※1) 溶接など接合方法の一種。材料同士を密着させ、高温で加熱しながら加圧する事で原子レベルで結びつける接合方法。一般的な溶接とは違い母材を溶かす事なく接合するため、微細な流路や複雑な三次元構造体の接合に適する。

(※2) 2重になった管の内外で熱交換を行うタイプの熱交換器。構造上、配管の継手が多くなり設置スペースが大きくなる欠点はあるが、主に高圧用途で使用される。

製品の開発にあたっては、(1)熱交換の対象となる水素は、金属組織の中に入ると材料を脆くする性質がある事から、耐水素脆化性を向上させるためにステンレス板に添加するニッケルなどの合金成分を最適化した。

また(2)拡散接合の様に金属を高温、加圧して接合すると一般的に強度が低下する傾向があるが、今回、強度を維持するために接合時の最適な温度などの条件の選定を実施した。

なお開発に於いては、素材として耐水素脆化性を向上した特殊なSUS316Lをステンレス・特殊鋼メーカーである日本冶金工業が供給した。

ちなみに近年、普及が進む燃料電池車(FCV)のインフラ設備である水素ステーションでは、主要機器である水素圧縮機やプレクーラー、ディスペンサー内で、水素を目的の温度に冷却するために、熱交換器が使用されてる。

従来は、この冷却で主に2重管式の熱交換器が使用されてきたが、継手の数が多く機器サイズが大きい事から、省スペース化による設置コスト低減が求められる水素ステーションでは、よりコンパクトな熱交換器が必要とされてきた。

その様な中、DCHEは2013年に初めて国内の水素ステーション向けに採用されて以来、現在では国内の水素ステーション向けに累計100基以上の採用実績を有している。

今後、神戸製鋼はさらなる拡販を進め、国内の水素ステーション向けに50%以上のシェア獲得を目指していく構えだと云う。

※:ISSF(International Stainless Steel Forum)
1996年に設立され25ヶ国32社のステンレスメーカー及び、25の関連業界団体で構成されている世界的機関。

上記機関のニューアプリケーション賞は、ステンレス鋼の新規応用を促進するため2015年から始まり、今回で2回目となる。「新技術」と「新市場開拓」の二つの部門から構成される。