JFE、高伸びと高穴広げ性を両立した980MPa級高張力冷延鋼板を新開発


プレス加工性に優れた冷延超ハイテンのラインナップ拡充

JFE(ジェイ エフ イー)スチール株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柿木厚司)は、超ハイテン(*1)では困難とされていた、優れた伸び特性と穴広げ性(*2)を両立する980MPa級の高張力冷延鋼板を開発した。

これは従来の当社汎用型の980MPa級冷延ハイテンと比較し、伸び値は2割向上、穴広げ率も2倍高くなっているもの。

複雑な形状の部品を高強度化することにより、一層の車体衝突性能の向上と、軽量化による燃費向上へ貢献する。

近年、自動車用の骨格部品には、耐衝突特性の向上と車体軽量化による燃費改善を両立するため、超ハイテンの適用が拡大している。しかし、複雑な形状の部品が必要とされるため、加工が難しい超ハイテンの使用は制限される場合もあった。

従来から伸び特性と穴広げ性が、それぞれ個々に高い冷延鋼板はありますが、これらを両立し、かつ高いレベルで実現する開発は今回が初。

一般的に、超ハイテンは伸び特性を向上させるために、延性に富む軟質相と、強度を担う硬質相を鋼板の金属組織中に共存させていた。そのため、大きな硬度差が破壊の起点となり、伸びフランジ成形性に劣っていた。

一方、穴広げ性に優れる超ハイテンは、金属組織が硬質相単一で構成されているため、延性に乏しくなっていました。これらにより、伸び特性と穴広げ性の両立は、超ハイテンの大きな課題だった。

今回、独自の熱処理技術により、金属組織中に軟質相と硬質相に加えて、中間的な硬度の相を分散し、組織中の硬度差を低減することに成功。

これにより、今まで難しいとされていた高延性材料の穴広げ性が、飛躍的に向上した。この手法を活用し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に続き、冷延鋼板でも高伸びと高穴広げを両立した980MPa級ハイテンがラインナップに加わった。

(*1)超ハイテン:引張り強さが980MPa以上ある高張力鋼板の総称。

(*2)穴広げ性:鋼板の伸びフランジ成形性を示す材料評価値。打抜き穴を円錐状の工具で押し広げ、初期径に対してどこまで広げられるかを穴広げ率で数値評価する。