JFEスチール、省資源型Si傾斜磁性材料の開発で「第49回市村産業賞貢献賞」を受賞


JFE(ジェイ エフ イー)スチール株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:柿木厚司)が世界で初めて開発・実用化した省資源型Si傾斜磁性材料『JNHFコア』、『JNSFコア』 が、財団法人新技術開発財団(総裁:寬仁親王殿下) から「第49回(平成28年)市村産業賞貢献賞」を受賞した。

受賞の贈呈式は、4月26日に帝国ホテル(東京・千代田区)にて執り行われる。

同社が市村産業賞を受賞するのは、昨年の『均一強冷却を用いた高張力厚鋼板の高精度・高能率製造技術の開発』に引き続き、2年連続となった。

また、今回受賞した技術については、金属学会技術開発賞(2014年)、中国地方発明文部科学大臣賞(2016年)も受賞している。なお受賞案件の概要は次の通りとなる。

東日本製鉄所(京浜地区)CVD連続浸珪ライン

1.受賞件名
電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料の開発

2.受賞者
– スチール研究所 電磁鋼板研究部 主任研究員
平谷 多津彦氏
– 東日本製鉄所(京浜地区) 商品技術部 主任部員
笠井 勝司氏
– スチール研究所 数値解析研究部 主任研究員
浪川 操氏

3.受賞技術の概要
電磁鋼板は、主にモーターや変圧器などの鉄心材料に使用されている。しかし機器を小型化し電力効率を高めるために、高周波条件下でも発熱しにくい特性が求められる。

つまり高周波鉄損が低いという性質を持ちながら、磁束密度をより高めていくことが必要だ。

しかし従来の製品化では鋼板のケイ素(以下、「Si」)含有量が増すほど発熱を抑制できる反面、磁束密度が低くなってしまうという課題があった。

そこで同社は、この課題を克服するために、独自開発したCVD連続浸珪プロセス技術を用い、鋼板の表層部と中心部のSi濃度をコントロールすることで、従来にない高性能かつ省資源型のSi傾斜磁性材料『JNHFコア』と『JNSFコア』を開発した。

JNHFコアは、板厚方向のSi濃度を表層部で6.5%、中心部でそれより低めになるように調整した鋼板である。これにより、Si濃度6.5%の従来鋼板より少ないSi量で、6.5%Si鋼板に勝る高周波低鉄損を実現した。

また、JNSFコアは、鋼の中でもSi拡散速度が遅いオーステナイト領域で浸珪処理することによって中心部のSi濃度をJNHFコアよりさらに低くし、表層部のみを6.5%に調整した鋼板となった。

これにより、3%Si鋼板並みの高い磁束密度と板厚0.1mmの6.5%Si鋼板並みの低い高周波鉄損を、板厚0.15mmの製品において実現した。

これらの製品は現在、太陽光発電のパワーコンディショナー、業務用エアコン、無停電電源装置、車載電源装置等の鉄心材料として使用されている。

また、加工歪みや応力による磁気特性劣化が少ないという優れた特徴も有しており、今後モーター用途などさらに広い分野での活用が期待されている。※なお、JNHFコア®、JNSFコア®はJFEスチール(株)の登録商標となっている。

ちなみにCVD連続浸珪プロセスとは、鋼帯の焼鈍ラインにChemical Vapor Deposition (化学気相蒸着)法を適用し、連続通板しながら炉内でSiCl4ガスと鋼帯を反応させ、鋼のSi濃度を高めるプロセスで、当初、6.5%Si鋼板を工業生産するために開発された技術である。
加えて同社は、1993年にCVD連続浸珪設備を独自に開発し、世界で初めて6.5%Si鋼板の工業生産に成功している。

市村産業賞とは、新技術開発財団(市村財団)がリコー(株)の創始者である故 市村清氏の意思のもと内閣総理大臣により設立許可され、昭和43年に設立された。

同財団は故人から私財の寄贈を受け、以来40年以上にわたり新技術開発の助成ならびに市村産業賞・市村学術賞の贈呈などを行っている。