出光興産と昭和シェル、組織・人的融和を介して協働事業化を加速へ


協働事業(ブライターエナジーアライアンス)の進捗でシナジー効果拡大を目指す方針について報告

出光興産株式会社(東京都千代田区丸の内三丁目1番1号:代表取締役社長:月岡 隆)と、昭和シェル石油株式会社(東京都港区台場二丁目3番2号:代表取締役社長グループCEO:亀岡 剛)は12月22日、先の2017年5月9日付で趣意書を締結した協働事業の強化・推進(名称:ブライターエナジーアライアンス)での進捗を発表した。

1.アライアンスの具体的成果
出光興産と昭和シェル石油は、ブライターエナジーアライアンス(以下 アライアンス)締結後、両社の企業価値向上を目指し、主に重複する各事業分野(原油船舶、精製、需給、物流、販売、コーポレート部門)面でのシナジー効果実現に向けた方策を検討してきた。

その結果、具体的なシナジーが実現されている主な領域として、半製品やボトム留分の有効活用・交錯転送の解消を可能にする7製油所統合最適生産計画システムの一部運用の開始。

その他、原油タンカーの共同配船、資材の共同調達、燃料油出荷基地の相互利用等を挙げている。また今年度に於いて、これらの取り組みを実施したことでのシナジー効果として80億円を達成する見通しであると述べている。

写真は、同日に開催されたアライアンス中間報告会の様子。亀岡・月岡両社長を筆頭に両社社員約100名が参加した。

2.今後のアライアンス取り組み
今後、両社は経営統合効果として掲げた500億円/5年の実現前倒しと、追加効果の更なる積み上げを図るため、検討のスピードアップに取り組み、結果、250億/3年のシナジー効果が、当初計画よりも早期に実現できる見込みとしている。

具体的には、その数値達成により、300億円/3年のレベルが視野に入ってきたと云う。そこで両社はこれを踏まえてシナジー効果拡大に向け以下のアクションを追加実施する。

(1) シナジーの積み上げとスムーズな経営統合を目指し、来春を目処に両社の原油・需給部門、調達部門、環境安全部門の事務所の統合を推進。同じ事務所で両社の社員が働くことにより、日常的にシナジーを考える環境の整備を目指す。

(2) 7製油所の競争力をさらに高めるため、国内需給に留まらず、製品輸出入まで含めた協働体制に取り組んでいく。特にアジア地域の石油製品市場に於いては、両社製油所の利点を活かしたトレーディング業務の協働も検討していく。

(3) 成長戦略の検討や規制への対応でも両社の強みを活かし、シナジー効果をさらに拡大するとしている。その取り組みは以下の通り。
・エネルギー供給構造高度化法3次告示対応
・2020年のIMO対応(投入原油の選択、製造設備対応、製品国内外販売等)
・次世代モビリティーに関する事業化検討
・バイオマス発電燃料の共同製造、共同調達
・アジア市場での石油化学、石油下流事業の共同展開
・再生可能エネルギーや火力ベースの電力事業の海外共同展開

(4)組織の融和・人的融和の推進
加えて文化や仕事の進め方等の違いを相互に認識し理解することを目的に、各階層でのワークショップを再開したと云う。

例えば9月には両社長をはじめ約650名が参加する大規模交流イベントを開催する等、1,500 名の計画に対し、延べ 1,700 名近い社員が参加し相互理解を深めたとする。

さらに新たな取組みとしては、11月から人事部門での相互出向を実施。今後各部門へと相互出向を拡大していく予定とする。こうしたことを踏まえた事務所統合に合わせ、来春を目処に約300名の社員が同一事務所で業務を行うとしている。

(5)社会貢献活動の一層の推進
社会貢献活動においても様々な協働を実施している。例えば小学生を対象に東京都と新潟県において「ブライターエナジーアライアンス エネルギー教室」を共催し、芸術分野では出光主催コンサート会場におけるシェル美術賞作品の展示や、シェル美術賞展覧会における出光後援のコンサートなどのコラボレーション企画を積極的に開催する等、今後も社会貢献活動の協業化も加速させていくと結んでいる。

一方で、昭和シェル石油との経営統合に反対する出光創業家は、資産管理会社である日章興産などを介して出光興産の株式を買い増し、同社を含む出光昭介氏ら共同保有者の保有割合を17.37%から18.2%に拡大させている。

もとより先の7月に出光興産が、発行済み株式数の3割に当たる新株を発行して約1200億円を調達したことで結果、創業家の議決権ベースの株式保有割合が26%台に下がっていた。しかし出光美術館と出光文化福祉財団の保有する出光興産株を含めると、現段階での保有割合が微増し28%に達しているとみられる。

但し、昭和シェルとの合併には株主総会で3分の2以上の株主の賛成による特別決議が必要であるため、出光興産経営陣が悲願としている経営統合は、他の株主がどちらに付くかの動向次第となっている。