中国の吉利、独ダイムラーの筆頭株主に浮上。背景にはEV戦略加速化の可能性


独・ダイムラーAG(本社:ドイツ・ヴュルテンベルク州・シュトゥットガルト、取締役会会長:ディーター・ツェッチェ)は現地時間の2月24日、中国の浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group Holding Co. Ltd./ジーリーホールディンググループ、本社:中国・杭州市浜江区、CEO:李書福)の李書福氏が、一般の株式市場からダイムラー社の株式の9・69%(議決権ベースの103,619,340株・1兆円規模)を取得し筆頭株主になったことを確認したとの報道発表を行った。

これにあたってダイムラーは上記報道資料で、「自動車業界に高い見識を持つ起業家・李書福氏の出資を得て当社は、業界の未来に向け、建設的かつ長期的に話し合うことができるパートナーを得たことを歓迎します。

なお、当社は中国国内事業について、北汽福田汽車(BAIC Motor Corporation., Ltd)とのパートナーシップの基、既に広範な実績を有しています」と述べダイムラー側は、中国当地での今後の事業の関わりについては、暗に自ら中国内ビジネスへの予防線を張るようなコメントで結んでいる。

浙江吉利控股集団は、2010年にボルボ・カーズ、2017年9月に英ロータスを傘下に収め、同年12月には、ABボルボに出資する方針も示したが、そんな同社によるダイムラーへの出資は、これまでも各メディアの報道を介して何度か報じられてきた。

そうした浙江吉利控股集団のダイムラー株取得に対するアプローチについて、ダイムラー自身は、企業間協議の可能性を否定しつつも、一般の株式市場からの株式取得の行動については反対しないと述べていた。

一方、浙江吉利控股集団でも今回の出資の目的について、現段階で公式な見解を示していない。しかしその一方で、ダイムラーに関しては独国内で、先のディーゼルエンジンの排出ガス不正に関わる報道が加熱。

かつて1990年代前後まで盛んにプロモーションで使われてきた同社傘下メルセデス・ベンツの企業スローガン「Das Beste oder nichts(最善か無か)」が引き合いに出され、世界最古の自動車メーカーとしての「ブランド価値の毀損」に及ぶのではないかと報道上で取り沙汰されており、ダイムラー側は、益々電動車への傾倒が加速されつつある。

対する浙江吉利控股集団も昨秋2017年10月、中国当地に於いて、ボルボ傘下の新生ポールスターブランドへ50億元(発表時換算で約849億円)を投資。
中国の成都に最新鋭設備を揃えたポールスターブランド車の生産施設であるプロダクション・センター(Polestar Production Centre)を設立し、中国市場を牽引する高性能フル電気駆動車ブランドの確立を目指すとしている。

これらを前提にすると浙江吉利控股集団では、世界最古の自動車メーカーへの出資したことよって新たな収益基盤獲得の道を拓いたと云うことだけではなく、電動車開発に関わる素材調達や技術交流など、浙江吉利控股集団とダイムラー双方が互いに保有する企業の未来に向けて、事業戦略上の何らかの相乗効果を生み出すことを視野に入れている可能性があると見られる。