富士重工業、AWD車の累計生産台数1,500万台を車両初搭載から44年で達成


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爆発的な販売数を売り上げるスバルのAWD車、その原点は45年前の1台の試作車両が切っ掛け

富士重工業株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:吉永泰之、以下スバル)は、同社が開発・生産するAWD車(※1)並びに、4WD車の累計生産台数が1,500万台を達成したと発表した。

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これは1972年9月に同社が発売した「スバル レオーネ 4WD エステートバン」に初めて4WD機構を搭載してから、延べ44年目での達成となる。(※1=AWDは、全輪に駆動配分を行う4WDとして、スバルがAll Wheel Driveと称して命名している駆動方式の名称)

さて今日、押しも押されぬ同社の一枚看板になった「スバルのAWD」こと全輪駆動方式なのだが、実は、スバルが全輪駆動そのものに着手した切っ掛けは、緻密なマーケティング策を打ち立てて、他社との差別化を図る等、ビジネス的な戦略ありきではなかった。

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スバルが、全輪駆動に関わることになった切っ掛けは、先のレオーネ4WD発売に遡る前年。降雪地のスバル販売店が、地元の電力会社から、業務上で雪上を容易に移動できる車両を求められたことが契機だ。

これに応えて、当時の車両ラインナップにあった前輪駆動車をベースに、特別に後輪駆動車のリアデフを組み合わせ、ドライバーがセレクターレバー操作で、適時2WDと4WDを切り替えて走れるクルマを試作したのが切っ掛けとなったのである。

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直結式4WD車の弱点解消の道程が、今日のスバルの基礎を築く

この後、独自の乗用4WDの世界を打ち立てたスバルは、直結式4WD車の弱点とも言える「タイトコーナーブレーキング現象(※2)」を解消するため、ATの油圧を利用した多板クラッチを採用。(※2=内輪差による前後タイヤの回転差が生む不具合)

これによって、様々な走行環境に応じて、クラッチの締結力を自在に調節できるようになり、手動によるレバー操作を不要にするアクティブトルクスプリット式全輪駆動の乗用車を誕生させた。

以来、MT車では1986年にセンターデフを採用。1989年にはビスカスLSDとセンターデフ併用式を投入。1994年には高出力モデル用として、電子制御を使ったDCCD(ドライバーコントロールセンターデフ)機構を持つトランスミッションを追加。

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一方AT車では、1981年にMPT(マルチプレートトランスファー)を使ったAWDを投入。1987年にアクティブトルクスプリットAWDを高機能化。

さらに、1991年にはVTD(バリアブルトルクディストリビューション)にしてセンターデフ+LSDを搭載したAWDシステム(※3)を投入するなど、相次いで自社製品の全輪駆動車に改良を加えてきた。(※3=アルシオーネ SVXに搭載)

なおこの間、ATのミッション機構はその多くを、トルクコンバーター+遊星歯車のステップATから、トルクコンバーター+チェーン式CVTのリニアトロニックに切替。

これに組み合わせるため、アクティブトルクスプリットAWDと、高出力に応えられるセンターデフ+LSDのVTDもそれぞれ用意するに至っている。

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2015年・世界販売台数に占める全輪駆動車の比率が98%に到達

結果、今日に於いてはセンターデフを組み込んだスポーツ車向けのVTD方式、MT車向けのセンターデフ+ビスカスLSD方式、MTのスポーツ車向けの電子制御LSDを組み込んだDCCD方式、AT用のアクティブトルクスプリットAWDとVTDを使い分けている。なお主に、高出力車にはDCCDおよびVTDが使用される。

ちみなに前後輪への駆動力配分も車両毎に微細に異なっており、アクティブトルクスプリット方式の60:40に対し、センターデフ+ビスカスLSD方式が50:50、VTD方式が45:55、DCCD方式が41:59といずれも異なる。

以降、一貫してスバルは全輪駆動車造りで独自の道を歩み続け、スバル車の2015年世界販売台数に占める全輪駆動車の比率は、他社からのOEM供給車を除くと98%に達するまでになった。

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また、同様にその98%が水平対向エンジンとの組み合わせによる、スバル独自のシンメトリカルAWD方式となっている。

このシンメトリカルAWDというのは、AWDが持つ走破性の高さに加え、縦置きに配置した水平対向エンジンを核とした左右対称の重量バランスに着目したもの。

現在のスバルAWDの中核かつ最も一般的な仕様は、駆動輪への動力配分を電子制御化したアクティブトルクスプリット方式で、これにCVT(無段変速機)が組み合わさせている。

ちなみに今日、こうした電子制御多板クラッチを用いた車両は他メーカーにも数多あるため、この部分だけを取り上げると、その技術は決して特別なものではない。

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すべては45年前の1台の車両が原点。出発点の課題解消策が好転して今日に至る

ただ、大半の電子制御多板クラッチを採用した4WD機構の車両は、ドライ路面など摩擦係数の高い道路では2輪駆動で走行し、雪道や泥濘地等タイヤの回転数が前後左右で異なり、スリップを誘発する場面でのみ、残りの2輪にも駆動力を配分する方式である。

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対してスバルのアクティブトルクスプリット方式は、そもそも前後直結4WDで発生するタイトコーナーブレーキング現象を解消するための多板クラッチ採用であり、4WD採用時の出発点が他メーカーとは異なっている。

この事から、前後の駆動配分は絶対に100対0にはならず、路面のスリップ状況に合わせ、常に全輪への駆動力を配分変化させている。

ゆえにドライ路面の巡航時には、駆動力が後輪に多く配分されるなど、常時、駆動力がアクティブに変化しているのが大きな特徴である。

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この方式の利点は、駆動力が失われる兆候が現れてから改めて駆動力が配分される他社方式とは異なり、常にアクティブに駆動配分が変化するため、急激な加重変化が原因で思わぬところでタイヤが埋まってしまうなど、スリップ要因になる場面がより積極的に防げるところにある。

富士重工業では、AWD車の累計生産台数1,500万台を迎えて「これからもブランドステートメント“Confidence in Motion”を通じ、スバルならではの魅力ある『確かなクルマづくり』を貫き、世界中のお客様へ『安心と愉しさ』を提供してまいります」と述べている。

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