ポルシェ初のフル電動駆動の4シータースポーツ「ミッションE」誕生


ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:マティアス・ミューラー)は9月15日(欧州中央時間)、ポルシェとしては初の試みとなるフルエレクトリックドライブの4シータースポーツカー「ミッションE」を発表した。

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このコンセプトカーは、ポルシェ初の800V電圧の最新駆動システムを採用したモデルで、その特徴は、4ドア、4セパレートシート、600PS(440kW)を超すシステム最高出力、500kmを超す航続距離、4輪駆動、4輪操舵などがある。

その絶対性能は、0-100km/h加速で3.5秒を切り、約15分の充電時間があればエネルギーの80%が充電される。

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また装置類は全て、ドライバーに重きを置いて設計されており、ドライバーのポジションにあわせ自動的にディスプレイが調整される。

ドライバーは運転中、アイトラッキングやジェスチャーコントロールを用いてインストルメント・パネルを直感的に操作することができ、一部についてはホログラムを介した操作も可能だ。

耐久レースのテクノロジーを採用して600PSオーバーを実現

この「ミッションE」は、全く新しい駆動システムを採用しながらも、クルマ造りの手法は典型的なポルシェスタイルを踏襲。今回もリアルサーキットでの実証実験を繰り返した末、ようやく完成に至ったという。

車両のパフォーマンス能力を担い、かつエネルギー回生も行う2基の永久磁石同期モーター(PMSM)は、今年のル・マンで優勝した919ハイブリッドで使用されているものとほぼ同じユニットが使用されている。

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この2つのモーターは合計で600PS以上を発生し、ミッションEを3.5秒以内に時速100km/hまで加速させ、また12秒以内で200km/hの速度に到達させる。

同車の高い動力効率、出力密度に加え、ミッションEの美点はもうひとつある。それは、既存の多くの電気駆動システムとは異なり、短い間隔の間で複数回の加速を繰り返した後でも、フルパワーを発生できる所にある。

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さらにオンデマンド型の4輪駆動システムであるポルシェ・トルク・ベクトリング(各ホイールへの自動トルク配分)を介し、精密な4輪操舵を駆使してシャープなコーナリングも可能にする。その裏付けは、ニュルブルクリンク北コースのラップタイムに現れており、その記録は8分を切る実力だ。

高い実用性、便利で迅速な充電時間、しかも航続距離は500km以上

ミッションEは、その卓越したスポーツ性だけでなく、実用性の高さも特徴のひとつだ。というのは同車は、1回のバッテリー充電で500km以上を走ることができ、15分以内の充電時間であって航続距離にして400km分のエネルギーを蓄えることができるのだ。

その理由は、ポルシェが同車に対して初導入を果たした800Vテクノロジーにある。現代の一般的な電気自動車の動力電圧は400Vであるのに対して、ミッションEはその2倍の電圧を持つ。

これが同車に多くの優位性を与えている。それは充電時間の短縮に加え、エネルギー伝達用の銅ケーブルが細くて軽いものになる等を筆頭に、構成部品の小型化が可能になり、車両全体の軽量化にも貢献する。

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なお車両の充電ポート自体は、運転席ドアの前の左フロントフェンダー部にある可動式ボディセグメントからアクセスする。

ここの800Vのポートを経由し、約15分で全容量の約80%まで充電ができる。もちろん従来型の400Vクイック充電ステーションに接続することもできる。

さらに、自宅のガレージの床にコイルを埋設すれば、そのコイル上に駐車するだけで誘導充電によっても充電が可能だ。

低重心による優れたドライビングダイナミクス

バランスに優れた重量配分と、低重心設計も同車の特徴のひとつだ。ボディ全体は、アルミニウム、スチール、カーボンファイバー強化樹脂などで構成され、パワーを路面に伝えるホイールはフロントは21インチ、リアは22インチのカーボン製だ。

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最新のリチウムイオンバッテリーは、車両アンダーフロアの前後アクスル間に配置されており、重量が前後の駆動アクスルに均等に配分されることから、きわめて優れたバランスが保持され、かつ重心位置も非常に低い。この2要因がミッションEのパフォーマンスを大幅に増幅させる。

デザイン:ポルシェのDNAを継承する魅力的なスポーツカー

130cmという低い全高に収められた車両造形は、フロントエンドを大きく切り詰められ、歴代のクラシカルポルシェの佇まいを忠実に再現している。

また4灯式のマトリクスLEDヘッドライトは、エアインレットのエアフローの中に浮遊するエレメントとして組み込まれフロントエンドに未来的な性格を与えている。

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4個のLEDユニットは、車両をアシストするシステム用のセンサー周囲にまとめられており、そのセンサーの周囲はインジケーターライトの役割を果たす。サイドウインドウのラインも911に似ている。ただしひとつ重要な相違点がある。

それは同車にはBピラーが存在せず、2つの観音開きドアによって乗降性が高められていることにある。

さらにもうひとつの違いは、車両のエアロダイナミクスに貢献するべく、従来のドアミラーの代わりに、ボディサイドに後方確認用のカメラが取り付けられていることだ。

左右のフロントフェンダーに取り付けられた外側カメラからの映像が、フロントウインドウの下側の隅に表示される。これにより既存車とは比類できないエアロダイナミクス性能を高めた。

インテリア:明るい解放感と4セパレートシート

ミッションEのインテリアは、ポルシェ伝統のデザインを踏襲しつつ、開放感、ピュアなデザイン、シンプルな構造、ドライバー重視の設計などを踏まえ、インテリアを完全に解釈し直した。

4つのセパレートシートは、レース用のバケットシートにインスピレーションを得たものとし、左右フロントシート間のセンターコンソールは、橋のようにエレガントな曲線を描きつつ、その下はオープンスペースとなってダッシュボードに伸びている。

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インストルメント・パネルに組み込まれたメーターは5連で、OLED(有機発光ダイオード)テクノロジーによってバーチャルに表示される。

ホログラフィックディスプレイによるタッチフリーのジェスチャーコントロール

また搭載されたアイトラッキングシステムは、カメラを使ってドライバーがどの計器を見ているのかを検知する。そしていわゆるパララックス(視差)効果により、ドライバーが低く座ったり、背を伸ばしたりすると、丸型メーターの3Dディスプレイがそれに反応して動く。これによりドライバーが重要な情報を見落とす恐れがなくなった。

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車両のアップデートは、スマートフォンまたはタブレットを使って、ポルシェコネクトストアから実行することが可能だ。

さらにポルシェ コネクトを使ってポルシェ正規販売店と直接連絡を取り、遠隔診断やアポイントメントの日程調整を行うこともできる。

その他で組み込まれているリモートサービスのひとつは、デジタルキーがある。これを介して車両のオーナーだけでなく、オーナーが承認した家族や友人などもドアを開けることができる。