F1バーレーンGP、ベッテル開幕2連勝。トロ・ロッソ・ホンダのガスリーが4位に食い込む


FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第2戦バーレーンGP(開催地:バーレーン・サヒール、開催期間:4月6日~8日)の決勝レースが現地時間4月8日(日曜日)18時10分(日本時間では同日の24時10分)から1周5.412kmのバーレーン・インターナショナル・サーキットを57周する形で行われ、フェラーリのセバスチャン・ベッテルがポール・トゥ・ウインで開幕2連勝を飾った。

例年通りのナイトレースとなったバーレーン。コースコンディションは、気温28度・路面33度・湿度46%のドライ環境。

ポールポジションに付いたのは、フェラーリ陣営のなかで最後の最後に首位争いをひっくり返したセバスチャン・ベッテル(1分27秒958)。これによってQ3当初はトップポジションにいたキミ・ライコネン(1分28秒101)が2番手となり、2台のフェラーリが1・2グリッドを占拠した。

その後方グリッド2列目には、予選で思った程ふるわなかったメルセデス陣営のバルテリ・ボッタス(トップに0.166秒差)が続いた。

実はこのボッタスの隣は、ルイス・ハミルトン(トップに0.2秒差)が並ぶタイムを叩き出したのだが、マシンのミッション交換で5グリッドの降格処分で9番グリッドスタートになったため、レッドブルのダニエル・リカルドが4番目。

さらにその後方の5番手には、なんとトロ・ロッソ・ホンダのピエール・ガスリーが付けるという異例の光景となった。

フォーメーションラップ後にシグナルスタートが切られ、ホールショットを獲ったのはベッテル。一方でライコネンは後方集団に飲み込まれる。

2番手争いは、そつの無いスタートを切ったメルセデスのバルテリ・ボッタス。そしてレッドブルのダニエル・リカルドとトロ・ロッソのピエール・ガスリーが鍔迫り合いを繰り広げるという混戦模様となった。

オープニングラップを終え各車、序盤のポジションが決まりかけた頃、レッドブルのダニエル・リカルドのマシンが突如スローダウンしてリタイヤ。この不運は、同じチームのマックス・フェルスタッペンにも訪れ、ハミルトンをオーバーテイクする際、左リアタイヤがハミルトン車にヒットしてタイヤが破損。

破損したタイヤのままでフェルスタッペンは走り続けてピットに辿り着き、コース復帰を果たすも以降、マシンに安定感を欠き、6周目にスローダウンしてリタイヤの憂き目に逢ってしまう。

これにより、漁夫の利を得た格好となったガスリーがベッテル、ボッタス、ライコネンを追う形で4位で好走。安定したタイムを刻む。

しかし9番手スタートからソフトタイヤを履き、タイヤ交換を抑えたロングディスタンス走行で、上位浮上を狙うハミルトンに8周目でかわされポジションダウン。

しかしガスリーは、そのままスピードを落とすことなく周回を続け、フェラーリとメルセデスという高出力ユニットを積むトップチームに次ぐポジションを固め周回を重ねていく。

その後、規定によりQ2で履いていたスーパーソフトタイヤでスタートしたベッテルが18周目に新品のソフトタイヤに変更。参戦チームの誰もが「2ストップ戦略で行く」と考えられていた同レースで、ベッテルは以降の展開で大きな冒険を果たすことになる。

こうしたフェラーリの安定した走りから、メルセデス陣営はトラックコンディションと、レースが終盤に向かうにつれ、路面温度が下がっていくと見てミディアムコンパウンドのタイヤをあえて選択。同陣営は1ストップ戦略を採って、レース終盤での逆転を狙う構えに出た。そして27周目にハミルトンにもミディアムタイヤを用意した。

一方、ソフトタイヤを選択したフェラーリ勢は、35周目にライコネンがより軟らかいスーパーソフトへと2回目のタイヤ交換を実施する際、左リアタイヤの脱着中に、発進の合図を誤って出してしまうというミスを犯した。結果、ライコネンにはピットレーン上にマシンを止めてしまいリタイア。

この間、レーストラック上を走り続けたベッテルは、1回目のソフトタイヤを履いた状態で、そのままゴールを目指す戦略を採るかも知れないと公開された無線通信を介して周囲に発言。ここからメルセデス、フェラーリの心理戦が始まった。

以降は、黙ってトップをひたすら走り続けるベッテルに対して、後方から追い上げるハミルトンは、ベッテルをキャッチアップするべく、無線でチームに対して終盤にベッテルを捉えるためのレース配分を相談するなか、ベッテルは、ほぼ無言で走り続け、最後の最後までタイヤを交換せずに走り続けることを伏せ続けた。

結果、2番手を走るボッタスは、残り周回4周の段階でベッテルを捉える直前の0.699秒差まで行くも、最終周でDSRを活かせるポジションまで追い縋ることができず、ベッテルが疲弊している筈のソフトタイヤで39周を逃げ切って優勝を果たす。

ハミルトンはこの2台を追い切ることができすに3位。この後、55秒送れの単独4位でガスリーがゴールラインを潜る。

5位にハースのケビン・マグヌッセン、6位にルノーのニコ・ヒュルケンベルグ。7位に一時期ミディアムタイヤでの1ストップ戦略を採ったもの結局、再度ソフトタイヤを履いてレースフィニッシュしたマクラーレン・ルノーのフェルナンド・アロンソ。

8位に同チームメイトのストフェル・バンドールン、9位にザウバーのマーカス・エリクソン、10位にフォース・インディアのエステバン・オコンが滑り込んだ。

なおガスリーのチームメイト、トロ・ロッソ・ホンダのブレンドン・ハートレーは後方11番手スタートから激しく追い上げたが、サインツ、ペレスに続く13位完走となった。

(*レース後の裁定により、本来13位完走だったブレンドン・ハートレーは、レース序盤に於いてセーフティカーラインまで順位を下げることを命じられたが、これを行うことを怠ったことで30秒の加算。プラス2ペナルティポイントを下され、結果、最下位の17位へ降格されることになった)

以下は決勝終了後のチームコメントとなる。

田辺豊治
HONDA F1テクニカルディレクター

今夜だけはこの瞬間を楽しみたいと思いますが、まだまだ始まりにすぎません

「今日はエキサイティングなレースの中で、両ドライバーともに安定したレースを見せ、2台ともに完走できたことに満足しています。
特にガスリー選手は週末を通して非常に素晴らしいパフォーマンスを見せていました。Hondaとして2015年のF1復帰以来最高の4位という結果をもたらしてくれたことに感謝しています。

ブレンドン選手については10秒停止のペナルティーを受けた影響で、13位(レース後17位に降格)という残念な結果になりました。
開幕戦でのPUのトラブルの後、HRDさくらとミルトンキーンズにいるメンバー全員が、本当に懸命に作業を続けてくれました。

その努力が今日の結果に結びついたと思っています。また、ここまでの信頼性改善と、Toro Rossoによるシャシーのアップデートにより、パッケージとしての着実な進化を感じています。
今夜だけはこの瞬間を楽しみたいと思いますが、まだまだ始まりにすぎません。
また明日からは、来週、上海での中国GPに向けた準備に全力で取り掛かります」

DRIVERS
ピエール・ガスリー(4位)
#GAS10

4位に入れたというのは驚くべき成果で、とてもうれしいです

「信じられない気分です。最高の一日になりました!Toro RossoとHondaが組んで2戦目にして、4位に入れたというのは驚くべき成果で、とてもうれしいです。

マシンは素晴らしく、チームには本当に感謝しています。マグヌッセン選手(ハース)とはいいバトルが展開できましたし、レースペースはすごくよかったです。不運にもレッドブルの2台がストップしてしまい、その後にライコネン選手もリタイアしたことで、チームが僕に4位のチャンスがあると伝えてくれて、最後まで全力を尽くしました。

マシンは初日から素晴らしい感触で、今日は全開でプッシュできました。ハースを引き離すことが狙いでしたが、十分なペースがありました。この喜びが覚めるのにはもう少し時間が必要ですが、今夜はチームと思い切り楽しみたいと思います!

最高のスタートが切れて、ターン1ではリカルド選手(レッドブル)の前に出られました。その後のリスタート時にはマグヌッセン選手に前に出られましたが、抜き返さないとタイムをロスしてしまうし、後から追いつくのは難しいと分かっていました。一度前に出てしまえば、リードを守れましたし、タイヤをいたわりながらペースを上げていけたので、とてもうまくいったと思います。レースペースが素晴らしく、最高にハッピーです!」

ブレンドン・ハートレー(17位)
#HAR28

メルボルンから大きく挽回することができました

「Toro Rossoにとっては最高の一日になりましたが、僕自身にとっては残念な結果に終わりました。スタートはうまく決められたのですが、ターン4でペレス選手(フォースインディア)と接触してしまいました。

これでフロントウイングにダメージを負っただけでなく、10秒のペナルティーを受けてしまいました。

ペナルティーさえなければポイント獲得も狙えるペースがあっただけに、フラストレーションの溜まる結果です。Toro RossoとHondaのみんなのおかげで、メルボルンから大きく挽回することができました。これは、今後のレースに向けてもいい傾向だと思います」

MANAGEMENT
フランツ・トスト
SCUDERIA TORO ROSSOチーム代表

Hondaとチームのみんなによる、最高の仕事を称えたいと思います
「4位というのは、HondaとToro Rosso双方にとって素晴らしい結果だと思います。バーレーンには新たな空力パッケージを投入しましたし、Hondaも改善したPUを持ち込んでくれました。

初日にピエールのマシンにアップグレードを入れ、メルボルンと比較してパフォーマンスが改善していることを確認しました。ブレンドンのマシンは前戦同様のセットアップにして、その違いを見極めようとしましたが、走らせてみるとすぐにCFD(コンピューターシミュレーション)と風洞実験で計算した期待値通りの成果があることが分かりました。

土曜日は2人とも同じバージョンにしたところ、ピエールは素晴らしい走りで予選6番手。ハミルトン選手がギアボックス交換のペナルティーで降格したので、5番グリッドを手にしました。ブレンドンもいいパフォーマンスを見せてくれ、Q3まであと0.1秒に迫る11番手につけました。

レースのスタートは2人ともかなり良かったと思います。ピエールは、1周目で4番手に順位を上げ、マグヌッセン選手とのバトルもうまく切り抜けて、最後までポジションを守り切りました。そんな走りの裏側では、タイヤの消耗と燃費のマネジメントをするためにスピードをコントロールしながら走っていたことも忘れてはなりません。

ブレンドンは不運にもスタートしてすぐにペレス選手と接触し、最初のピットストップで10秒加算のペナルティーを消化しなければならなかったので、ポイント圏内でフィニッシュすることはできませんでした。

後方のトラフィックに捕まってタイムロスし、前方集団に追いつくのは難しい状況でしたが、いい仕事をしてくれたと思います。我々が2回目のピットストップを行ってスーパーソフトタイヤに履き替える決断をすると、前との差をどんどん縮めていってくれました。あと4~5周あれば10位に手が届いたと思います。

この結果にはとても満足しています。シーズン2戦目にして4位フィニッシュというのは、Honda、Toro Rossoの双方にとって、とても明るい兆しになりました。このレベルのパフォーマンスを維持していく自信があります。もちろん、今回はリカルド選手もフェルスタッペン選手もリタイアしての結果ですから、毎戦4位になれるというわけではありませんが、すべてのレースでポイントは狙えると思います。

さくらにいる、Hondaの研究開発部門の皆さんにお礼を伝えたいです。彼らがオフシーズンに素晴らしい仕事をやり遂げ、パフォーマンスだけでなく信頼性も向上させてくれた結果、我々は上位で争うことができています。そして、ビスターの空力チームにも感謝しています。すべてのアップグレードが有効に機能し、本当にいい仕事をしてくれました。Hondaとチームのみんなによる、最高の仕事を称えたいと思います」