F1オーストリアGP予選、ハミルトンPP獲得。バトン3番手グリッドを獲得


FIAフォーミュラ・ワン世界選手権、第9戦オーストリアGP(開催地:オーストリア・スピルバーグ、レッドブル・リンク<コース全長:4.326km・決勝71周>、開催期間:7月1~3日)の予選セッションが、現地時間7月2日(土曜日)の14時から実施された。

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今回のオーストリアGPでは、前日のフリープラクティスを通して好タイムを記録し続け、好調さを維持し続けていたのは、メルセデス陣営のニコ・ロズベルグなのだが、なんと予選直前の最終フリープラクティスで、サスペンショントラブルに見舞われてクラッシュを喫する。

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またその前日には、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)も、コースアウトによるマシントラブルに見舞われている。

このため上記2人は、マシン破損によるギアボックス交換を余儀なくされ、予選セッションに臨む前段階で早くも、予選結果から5グリッド降格の処分が決まってしまっている。

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そして迎えた土曜日、想定外の番狂わせを予感させる予選開始時の走行環境は、気温27度・湿度49%・路面温度52度という欧州の夏らしい気候であるものの、急激な天候の変化も考えられる曇天のドラインコンディション下での戦いとなった。

そんなQ1開始早々、平素トップタイムを競う常連たちの中で、まずルイス・ハミルトン(メルセデス)がいち早くコースに飛び出す。

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その他の上位陣営が、慎重にコースインのタイミングを計るのをよそに、ハミルトンは1分07秒台から着実にスピードを上げ続けて、遂に1分06秒台をキープ。

これにセバスチャン・ベッテルと、キミ・ライコネンのフェラーリ陣営が追従する形となった。

一方、予選前のアクシデントで出走が遅れてしまったニコ・ロズベルグ(メルセデス)は、車両修復後の遅れを経て、彼らを追う様にコースイン。走り始めて早々に、1分06秒516のファステストラップを刻んで気を吐く。

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しかしその直後、ダニール・クビアト(トロ・ロッソ)がターン8で大クラッシュを演じてQ1は赤旗中断に。

しかも再開後には、先のクビアトの僚友、カルロス・サインツ(トロ・ロッソ)がエンジントラブルでストップとなり、トロ・ロッソ陣営は不運にも2台共に初期セッションに於けるQ1敗退が早くも決定する。

さらにケビン・マグヌッセン(ルノー)、ジョリオン・パーマー(ルノー)、リオ・ハリアント(マノー)、マーカス・エリクソン(ザウバー)、フェリペ・ナッサー(ザウバー)が姿を消した。

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続くQ2では、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が1分06秒228叩き出して首位。これに0.175秒遅れのニコ・ロズベルグ(メルセデス)が続く展開。

さらにこれを、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が追う流れとなり、次セッションQ3を前に、Q2セッションは複数のマシンによるシーソーゲームが期待される展開となった。

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しかし不運にも同セッション途中で、眼に見えて雨粒が落ち始め、各車早々にタイムアッタクを断念する。

結果Q2の通過組は、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、ニコ・ロズベルグ(メルセデス)、セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、ダニエル・リカルド(レッドブル)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、バルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、キミ・ライコネン(フェラーリ)、フェリペ・マッサ(ウィリアムズ)、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)と続き、トップ10圏内の最後尾に、ジェンソン・バトン(マクラーレン)が食い込んだ。

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これにより、雨足で出鼻をくじかれたエステバン・グティエレス(ハース)、パスカル・ウェーレイン(マノー)、ロマン・グロージャン(ハース)、フェルナンド・アロンソ(マクラーレン)、そしてマシントラブルでQ2自体を走れずに終わったカルロス・サインツ(トロ・ロッソ)、ゼルシオ・ペレス(フォース・インディア)たちは敢えなくQ2敗退となった。

続くQ3開始段階は、当初のQ1開始時と打って変わって雨足がコースを濡らす。このため全車がインターミディエイトタイヤを履いてコースインした。

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その後、雨足がやわらぎ、曇天の空に移り変わるという微妙な天候となり、タイヤ交換のタイミングが、Q3の勝負の行方を分ける展開となった。

当初は、ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)がいち早くウルトラソフトのドライタイヤを履いてファステストラップを更新していく。

しかしメルセデスを筆頭として、次第に後続のタイムアタック組に飲み込まれていく。

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結果、今回はQ1から気合いが入っていたルイス・ハミルトン(メルセデス)が1分07秒922を叩き出してPPを獲得。

2番手ニコ・ロズベルグ(メルセデス)、3番手ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)、4番手セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、5番手ジェンソン・バトン(マクラーレン)、6番手キミ・ライコネン(フェラーリ)、7番手ダニエル・リカルド(レッドブル)、8番手バルテリ・ボッタス(ウイリアムズ)、9番手マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、10番手フェリペ・マッサ(ウイリアムズ)と続いた。

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なお決勝グリッドは、先のフリープラクティスのトラブルによるミッション交換で、ニコ・ロズベルグ(メルセデス)とセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が降格となるため、マクラーレン・ホンダ陣営のジェンソン・バトンがグリッド2列目に並ぶことになる。

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予選PP、ルイス・ハミルトン
「ターンの数が少なく、緻密な戦略が求められるコースだから、予選セッションにブランを練り上げてきた。

完ぺきなラップを達成するのは簡単ではないし、ドライバーとして僕はブレーキをきれいに深く踏むタイプだから、率直に云って自身のスタイルに向いているサーキットではない。

ここでは早めにアクセルを離さなければならないし、最低のスピードを高めに維持しなきゃならないけれど、僕はそういう走りに慣れていない。

ただコース自体は一旦、雨足で濡れても速く乾いていくそれで予選が本当に面白くなった。けれども明日は、もう少し涼しくなってくれることを願う。そうすればタイヤ管理の助けになるし、良いスタートが切れるだろう。レースは面白くなるだろうから、いい1日になることを願っている」

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決勝2番手スタート、ニコ・ヒュルケンベルグ
「今回のセッションでのパフォーマンスには満足している。Q2のドライ路面での走りは、僕がポールポジションを取った2010年のブラジルGPを思い出した。

こういうトリッキーなコンディションは僕にとって本当に楽しい。グリップがどこにあるか分からなくて、ちょっとしたリスクを冒し、絶妙なタイミングでドライタイヤを履く必要がある。

それこそ、今日の僕らのチームがやったこと。チームは素晴らしい努力をしてくれたし、レースに向けて最高の位置につけた。

周りには速いマシンがたくさんいるだろうけど、僕のマシンも感触がいい。ここではすべてのセッションで強かったから、ポイントを持ち帰ることができると思う」

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決勝3番手スタート、ジェンソン・バトン
「明日は3番手からスタートすることになる。楽しいセッションだった。

本当はQ2のターン3でロックアップして、終わりだと思っていた。ターン1と2で雨粒が落ちてきたが、ターン3は影響ないだろうと踏んでいたが膨らんだが、ギリギリで踏み留まることができた。

ただ、こういうコンディションはゆえに良い結果を出せたのだろう。とにかく最後のラップのためにマシンを温存するべく頑張ったよ。結果、イエローフラッグが出なくてラッキーだった。

明日はタフな1日になる。誰もタイヤの正確な反応を理解できていないからね。しかし3番手からスタートする僕らはいい位置にいる。今日は幾つかのリスクを冒したが、それが全てうまくいったようだ。」

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予選2位から降格7番手スタート、ニコ・ロズベルグ
「今日の結果はチームの努力のたまものだ。ダメージを受けた僕のマシンの修理が予選に間に合うよう働いてくれた。

セッションは雨のせいでトリッキーな内容になったし、パーフェクトなラップが全然まとまらずルイスの方が速かった。明日はそのルイスが一番前からスタートする。

対して5グリッド降格のペナルティは痛い。それに、ウルトラソフトを履いて他のマシンと戦うのは厳しいだろう。ただ間違いなくエキサイティングなレースになるし、できることは沢山あると思っている」

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以下は、ジェンソン・バトンを除くマクラーレン・ホンダ陣営の予選終了後コメントとなる。

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フェルナンド・アロンソ
「僕らにとってはスムーズな予選とはいかなかった。特にQ2は雨の脅威が迫っていたので、できるだけセッションの早い段階でガレージを出ようとした。

しかし残念なことに、何らかの理由で僕のクルマには新品タイヤではなく、Q1で使用したユーズドのウルトラソフトタイヤが装着されていた。

その後2回目の走行で新品を履いたが、イエローフラッグでラップを断念しなければならなかった。

今日は他のドライバーやチームのミスを利用しなければならなかったのだが、残念な結果となった。決勝での14番手グリッドから巻き返しには、コンディションの変化が必要だろう。明日の予報は雨だから、どうなるか見てみよう」

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エリック・ブーリエ(レーシングディレクター)
「ジェンソン、そしてチームは極めてタフでトリッキーな予選セッションで、素晴らしい仕事をしてくれました。

Q3でのジェンソンは、インターミディエイトでもウルトラソフトでも、大きな自信を秘めているように見えた程です。

彼はインターミディエイトタイヤで全ドライバー中2番目に速いタイムを出し、それから急速に乾きつつある路面で皆がウルトラソフトに変えていく中、今度は全体の5番手に飛び込んで見せてくれました。

この結果は、ジェンソンのドライブが優れていたのはもちろんのことです。一方で非常に過酷な状況下で、マシンが正しい場所に正しいタイミングで入り、変化するコンディションをフルに活用できるように力を合わせて働いてくれたエンジニアとメカニックたちにも敬意を表したいと思います。

次に、Q2の最初のラップではフェルナンドのタイヤ装着で不注意が起こってしまった。ただ彼が事実上Q3に進むチャンスを失ったのは、2回目の走行のターン3で遭遇したイエローフラッグでした。

それはジェンソンがグラベルに飛び出した際に出されたものでした。その後天候が悪化してしまったので、彼に次のチャンスが巡ってくることはありませんでした。

結果、今日の私たちはコインの両サイドを経験することになりました。これを踏まえて明日の狙いは、ミスの発生を最小限に抑え、予想がつかない展開になると思われるレースで、最大限のチャンスを生かし、良いポジションにいられるようにすることにあるでしょう」

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長谷川祐介(本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者)
「マクラーレン・ホンダチームにとって、これまでで最高の予選結果に終わり、ハッピーエンドでした。

ただQ2とQ3の間に降った雨のため、大混乱の予選セッションになりました。

Q3ではコースがウエットからドライに変化していく中、チームはドライタイヤで出る正しいタイミングに関して良い決断をしたと思います。

ジェンソンは最後のラップで5番手に入る素晴らしい走りをしました。その一方で、フェルナンドはイエローフラッグにひっかかってしまって、Q2でクリーンなラップが走れずに不運でした。

明日はまた天候が安定していないとの予報ですので、われわれの希望は、予選でのポジションを最大限に生かしてチームにポイントをもたらしてくれることです」

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オーストリアGP 2016 予選結果
順位_ドライバー/チーム/タイム
1_ルイス.ハミルトン/メルセデス/1’07.922
2_ニコ.ロズベルグ/メルセデス/1’08.465
3_ニコ.ヒュルケンベルグ/フォース・インディア/1’09.285
4_セバスチャン・ベッテル/フェラーリ/1’09.781
5_ジェンソン・バトン/マクラーレン/1’09.900
6_キミ・ライコネン/フェラーリ/1’09.901
7_ダニエル・リカルド/レッドブル/1’09.980
8_バルテリ・ボッタス/ウィリアムズ/1’10.440
9_マックス・フェルスタッペン/レッドブル/1’11.153
10_フェリペ・マッサ/ウィリアムズ/1’11.977
11_エステバン・グティエレス/ハース/1’07.578
12_パスカル・ウェーレイン/マノー/1’07.700
13_ロマン・グロージャン/ハース/1’07.850
14_フェルナンド・アロンソ/マクラーレン /1’08.154
15_カルロス・サインツ/トロ・ロッソ/1’07.618
16_セルジオ・ペレス/フォース・インディア/1’07.657
17_ケビン・マグヌッセン/ルノー/1’07.941
18_ジョリオン・パーマー/ルノー/1’07.965
19_リオ・ハリアント/マノー/1’08.026
20_ダニール・クビアト/トロ・ロッソ/1’08.409
21_マーカス・エリクソン/ザウバー/1’08.418
22_フェリペ・ナッサー/ザウバー/1’08.446