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佃義夫のモビリティ徒然草 – 2015年、国内自動車市場を占う

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2015年度始動、気になる国内自動車市場の行方

つれづれなるままに、とは兼好法師の随筆の冒頭だが、筆者は自動車産業界を半世紀近くウオッチしてきた中で今回、自動車ウェブマガジン「MOTR CARS」スタートにあたって、このモビリティコラムをつれづれなるままに、これから進めていきたい。

軽自動車税引き上げ、輸入車も円安で値上げか

4月から2015年度が始動。世の中では四月から値上がるものが多く伝えられる中で、自動車は「軽自動車税」が引き上げられ、エコカー減税も燃費基準が厳格化され車種によっては実質増税となる。
また、輸入車もメルセデス・ベンツ日本が4月1日から平均2%の値上げを発表している。

政府は取りやすいところから取る税体系を温存

自動車の税制に関しては、かねてから複雑かつ高い水準の車体課税の簡素化が論理的にみても正当であるのは衆目が一致していた。だが、国の財政収支の観点からは「取りやすいところから取る」、つまり自動車が一番取りやすいことで長年の間、温存されてきたわけだ。

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それが消費税増税論議のなかでようやく「タックスオンタックス」である自動車取得税廃止(10%への再増税時)の方向が進んだが、それも昨年末の安倍政権による突然の解散選挙で27年度税制改正論議が吹き飛んでしまった。

エコカーに有利、軽自動車に増税は妥協の産物

結果、年明けの27年度税制改正大綱の閣議了承、正式施行が決まり自動車に関する自動車取得税と重量税の新エコカー減税と軽自動車税の引き上げとなったわけである。
安倍政権は、選挙で信任を得たものとし、アベノミクス景気判断のなかで消費税10%の時期を先延ばし(平成29年4月)とすることで、自動車関連税制もエコカーに有利、軽自動車に増税と妥協の産物を示した訳である。

地方ではクルマ生活の核になった軽自動車

軽自動車は、言うまでもなく日本独自の規格によって「小さくても性能、品質の高いクルマ」に進化し、現在では日本国内の新車市場の40%を超える位置づけを示した。
クルマが生活に欠かせないものとなっている地方部では、複数保有の核となっているのが軽自動車なのだ。

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「ミスター軽自動車」の鈴木修スズキ会長兼社長は「いまや軽自動車が日本国民の足として名実共に認められた」と言い、税制面で軽自動車の恩典とする見方に全面反発する。

だが、結果的に取りやすい軽自動車がターゲットにされたかに思える。

今年のエコカー燃費基準変更が輸入車の障害に

一方、輸入車市場は、2014年の新車販売が29万台、前年比3・4%増で17年ぶりの高水準と消費税増税の逆風を追い払う流れを示した。
VW 、アウディ、ベンツ、B M W といったドイツ勢が輸入車を引っ張る。しかし、円安という為替変動は輸入車の値上げを余儀なくさせる。加えて4月からのエコカー燃費基準変更は輸入車にとって厳しくなる。

本年度新車需要見通し500万台割れの見方

日本自動車工業会は、2015年度の国内新車需要見通しを491万1900台、前年比7・3%減と予測して発表した。この500万台割れをどうみるか。池史彦自工会会長は「日本経済は緩やかな回復にあるが、軽自動車が増税、昨年主要モデルの新車投入の反動で落ち込む」と登録車横ばい、軽自動車が減少すると見る。

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自工会予測の499万1900台のうち、登録車が309万190台、前年比0・4%減、軽自動車が190万台、同12・4%減である。最近の国内新車市場の牽引役だった軽自動車が大きく落ち込むと予測するが果たしてそうだろうか。

国内500万台ラインの堅持が自動車産業の命題だ

日本国内市場は、軽自動車が4割以上を占め、一方で輸入車の存在感が高まるというように、二極化のトレンドにある。次世代エコカーへ電気自動車、燃料電池車が市販化され、ハイブリッド車が主流化する中でガソリン・ディーゼルの内燃機関も大きく進化している。

Finishing_s

逆風はあるが、国内500万台ラインのキープを堅持していくことがグローバル化が進む日本自動車産業の命題ではないのか。自工会の予測は「保守的にすぎるのでは」と自工会会長会見でも質問があった。グローバル戦略にあって日米欧の先進国地域と中国、アジア、南米などの新興国地域の異なる市場戦略のなかでさらに日本国内は、母国の特別な位置づけにある。

母国生産・販売を固めてこそグローバル戦略を

少子高齢化主体の人口減、若者の価値観多様化など日本国内自動車市場を取り巻く先行き見通しは厳しいものがある。それでも日本全体は地方を中心にくるま社会が定着している。これをしっかりとフォローしていかねばならない。
(MOTOR CARS編集顧問 佃義夫)

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佃義夫(佃モビリティ総研代表)
1970年に日刊自動車新聞社、編集局・配属。自動車販売・整備担当を皮切りに部品・物流分野をから国土交通省・経済産業省などの管轄官庁記者クラブ、経団連記者クラブと自動車産業を総合的に網羅し記者としてのキャリアを積んだ。その後、編集局デスク・論説担当編集局次長を経て、出版局長として自動車産業オピニオン誌「Mobi21」を創刊。以降、取締役編集局長・常務・専務・代表取締役社長を歴任。同社86年(2015年現在)の歴史上二人目となる「主筆」も務めた。日刊自動車新聞社退任後「佃モビリティ総研」を立ち上げ、同総研代表。

ダイヤモンドオンライン連載中
モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫