ボッシュ、AI・ICTソリューションを拡充させて日本国内事業の規模拡大を目指す


ボッシュ日本の2017年・年次報告記者会見。2016年の売上高2,670億円、国内自動車メーカー売上は全世界規模で前年比6%増

独・ロバートボッシュの日本法人、ボッシュ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:ウド・、以下ボッシュ)は6月8日の午前、同社本社拠点に於いて2017年の年次報告記者会見を開催した。

その会見内容によると、日本国内法人としてのボッシュの2016年度の第三者連結売上高は、約2,670億円(約22億ユーロ)となり、前年とほぼ同一水準を維持した。

なお2017年の第三者連結売上高に関しては、およそ3~5%ほど増加する見通し。

これらの達成数字について、ボッシュ株式会社・代表取締役社長のウド・ヴォルツ氏は、「2016年度、全世界市場を分母とした国内自動車メーカーの売上高比率は、前年比約6%増加となり、2015年からの引き続いてのプラス成長となりました。

2017年度に向けての具体的数値の裏付けでは、自動車向けインフォテインメントシステムや、二輪車向け製品の需要増加が見込まれ、これによりさらなる売上の増加が予測されています。

またモノのインターネット化(IoT: Internet of Things)による事業領域の拡大についても、今年は幸先の良いスタートを切ることができています。

加えて当社が、かねてより重点領域に据えている車両の『電動化』『自動化』『ネットワーク化』の分野では、日本国内に於いて、いよいよ複数の量産プロジェクトが始まります。

ボッシュは、これら昨今の自動車業界に於けるメガトレンドである該当分野で、着実に事業拡大を進めており、今後も日本のお客様へ革新的なソリューションを提案するべく、積極的な投資を行い、さらなる事業の拡大に注力してまいります」と語っている。

ちなみにこれらの事業拡大要素に合わせた日本国内に於けるボッシュ・グループの従業員規模は、2016年12月末時点では約6,600人であったのだが、2017年は、この従業員数が微増していく見込みであるとしている。

電動化では、日本の自動車メーカー向けに48Vハイブリッドシステムを2019年に量産

さらにヴォルツ氏は、『電動化ソリューションの拡大』について、「当社の48Vハイブリッドシステムは、より高電圧なストロングハイブリッドシステムよりも手頃な価格帯でありながら、総合コストで燃費向上に貢献するというスタンスであり、ボッシュには欠くことのできない電動化ソリューションです。

同製品に関しては、日本の自動車メーカー向けに2019年から量産予定に入っており、制動エネルギーの回収とコースティング中にエンジンを停止するスタート/ストップ機能により、燃料消費量を最大で15パーセン低減させることが可能となっています。

併せてこのシステムは、燃費という実用面のみの貢献だけでなく、快適性の向上にも寄与します。

それは48V化によるブースト機能から得られるパワフルな走りや、車載コンポーネントとの最適化。そしてエアコン機能などの付帯機能に対する快適性能の向上などあります。

また、システム構成によっては駆動力向上や短距離の電動走行も可能であるため、さらなるドライビングエクスペリエンスの提供も可能になります」と述べている。

次いでヴォルツ氏は、今後もパワートレイン事業の拡大を目指すと宣言した上で、「48Vハイブリッドシステムは、さらなる電動化への効果的な架け橋ですが、ボッシュが提供する電動化ソリューションは、低電圧から高電圧のハイブリッドシステム、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池に至るまで多岐にわたります。

そうした未来への取組については2018年初頭から、eモビリティに特化した事業部門に既存のガソリン システム事業部とディーゼル システム事業部を統合させた『パワートレイン ソリューションズ事業部』が設立されます。

これにより、お客様の求めるすべてのパワートレイン技術を、コンポーネントからモジュール、システム一体型など多様な形で提供いたします。

また、2017年の初めには燃料電池システムに特化した組織、『FCEVプロジェクト推進室』を日本国内に新設しており、日本の自動車メーカーへのソリューション提案も強化していきます」とコメントしている。

自動運転化では、日本市場向けの自動運転や先進技術のためのシステム開発能力をさらに強化

続いて自動運転に関しては、この2017年、さらなるシステム開発力の強化を目指す構えだ。

ボッシュは同分野で、2015年から日本国内に於いて自動運転の公道試験を開始。2016年には、自動運転を含む先進技術のシステム開発力をさらに強化するための新組織「システム開発部門」を設立した。

この組織は、既存の事業部門の枠組み超えたクロスファンクショナルな機能を持ち、包括的なシステム開発を手がけている。

これらの業務フローは社内で、60名以上のエンジニアが開発に取り組んでいることから、今後、日本の自動車メーカーに対して、より広範な開発サポートを提供することが可能になっている。

また、システム開発部門では、自動化の技術に留まらず、ネットワーク化と連携した技術やサービスを提供する。

ちなみに、ここまで記載した自動運転要素に於いて、実は最も重要なソリューションは、ステアリングシステム事業の強化にある。(※ 以下で編集部からの注釈あり)

この分野では、2015年1月にボッシュ・グループ傘下に加入した合弁会社が、グループ内の「オートモーティブ ステアリング事業部」として日本での事業を拡大している。

同部門は、グループ加入当時に比べ人員が約3倍に増加し、2017年の夏には新たなテストセンターが稼動を開始する運びだ。

今後、ますます増加する自動化のニーズに対応し、またシステム開発部門との連携を強化するために、さらなる事業展開を計画している。

(※)ちなみにボッシュは、2014年9月15日付けで、かつてZFとで、各々50%の折半出資で合弁企業として保有していた「ZF Lenksysteme GmbH(ZFLS)の完全子会社化を発表している。

このZFLSは、乗用車および商用車向けステアリングシステム(電動式と油圧式)の開発・製造・販売を全世界に展開。ZFLSの製品群には、完結したステアリング システムのほか、ステアリングコラム、ポンプ、ステアリング関連部品が含まれている。

さらにボッシュは、数日前の2017年6月1日付けで、イタリア・ミラノ郊外のヴィッラサンタに本社を置くアルミダイキャストのメーカーのAlbertini Cesare社の全株式を取得する予定であることを発表している。

同社は、電動ステアリングシステムを含む自動車業界向けに、主にキャストハウジングを製造する従業員400人規模の企業で、今後、ボッシュは電動ステアリングシステムの鋳造ハウジング製造の能力を確保した。「ステアリングシステム事業の強化」にはこうした取り組みも含まれているものと思われる。

ネットワーク化では、日本の自動車メーカー向けに車載ファームウェアの無線アップデートを2019年提供開始へ

ステアリングシステムを抑えた後、さらに自動運転を前進させるのは、車両のネットワーク化となる。

この分野では、車載ファームウェアの無線アップデート(FOTA: Firmware update over the air)が、いよいよ日本国内でも開始される。

具体的な日時については、ボッシュ社内で、およそ確定しているようだが、具体的には、来る2019年に日本の自動車メーカー向けにファームウェアの提供が開始される予定だと云う。

ヴォルツ氏によると、「コネクテッドカーの市場規模は、今後5年間で、年率25%近い増加が見込まれています。

この領域に於ける当社の強みのひとつに、ソフトウェアやファームウェアの無線アップデート(FOTA)があります。

FOTAにより、インフォテインメントだけでなく、自動運転など自動車の制御に関わる機能も無線で追加・更新が可能になります。

ボッシュは、更新時の車内通信統制の役割を担うゲートウェイコンピューターから、サイバーセキュリティ対策まで、FOTAに必要な全てのソリューションを一貫して提供できる世界でも数少ないサプライヤーであると自負しています」と話す。

さらにヴォルツ氏に続いて、この年次記者会見に参加していたGlobal Head Bosch Center for Artificial Intelligence(ボッシュ国際人工知能センター主査)であるクリストフ・パイロ氏は、「ネットワーク化の進展がもたらす恩恵は、通常の運転だけに限りません。例えば駐車時の車両の使い勝手でも大きな変化をもたらします。

駐車時にネットワーク化技術を取り入れる我々の『コネクテッドパーキング』は、駐車スペースを探すストレスからドライバーを解放します。

駐車場の空きスペースを検知し、リアルタイムで駐車スペースを確認・予約できる『アクティブ パーキングロット マネジメント』や、ドライバーが駐車場の入り口で降車し、スマートフォンで駐車の指示を行なうと車が自動で駐車スペースに向かい、また逆に車を呼び出すことも可能な『自動バレットパーキング』。

路上を走行する車両が路肩の空き駐車スペースを検知し、リアルタイムで生成される駐車マップにより、空きスペースの情報をユーザーに提供する『コミュニティ ベース パーキング』などの様々な便利なサービスがあります。

現在、ボッシュでは欧州や米国でコネクテッドパーキングの実証実験に取り組んでいますが、日本市場でもこうしたコネクテッド技術の提供を検討しています。

さらにAIを活用したスマート農業ソリューション「Plantect」で事業領域の大幅拡大も目指して行く

併せてボッシュは、モビリティの分野に留まる事無く多角的な事業領域で、IoTをリードするサプライヤーを目指しています。

それはこれまでの画一化されたサービスから、ユーザーそれぞれの嗜好や、特性に合ったサービスのパーソナル化へと向かっています。

そんなIoTサービスのパーソナル化で、重要な役割を担うのがAIです。ボッシュでは2017年にAIの研究センター『Bosch Center for Artificial Intelligence(BCAI)』を設立しました。

ボッシュにとって、このセンターを設立した目的は、AIの専門知識を強化することです。というのはIoTの好機を掴むためにAIは不可欠だからです。

ボッシュは、今後AIを活用してIoT事業のフットプリントをさらに拡大させていきます」と述べ、同社はAIを活用した新たなサービスの一例として、2017年に日本で販売を開始するスマート農業ソリューションを紹介した(スマート農業ソリューションについては別稿にて記述する)。