アウディが次世代戦略策定。来年中に主要後継車・19年に新SUV2車種・20年迄にEV3車種投入


中核ビジネスは堅調。販売台数、売上高のいずれも増加。特別項目を除外した営業利益率は目標範囲内の8.2%達成へ

アウディAG(本社:ドイツ・バイエルン州インゴルシュタット、取締役会長:ルパート・シュタートラー、以下アウディ)は、今後数年の間に製品ラインナップを大幅に刷新し、複数の電気自動車を市場へ投入するほか、新しいデジタルビジネスの分野に参入する。

同社によると現時点で中核ビジネスが堅調なことから、今後の投資のための基盤も整っているとする。このため2016年、アウディ グループの売上高は593億ユーロに増加し、特別項目を除外した営業利益率は8.2%を達成していると云う。

アウディは、V6 3.0 TDIディーゼル問題とタカタ製エアバッグの関連で、合計18億ユーロの引当金を計上。しかしこれらの特別損失を含めても31億ユーロの営業利益をあげ、営業利益率も5.1%を確保しているとも語っている。

AUDI AG取締役会会長のルパート シュタートラー氏は、上記見解を含む内容を発表した3月15日開催の年次記者会見で、「2016年は当社にとって厳しい試練の年になりました。

しかし、中核となるビジネスから着実に利益をあげると共に、将来に向けた道筋も定めることができました。

アウディは2020年までに、バッテリー式電気自動車を3モデル導入する予定で、その後もモデルシリーズの電動化を進めていく方針です。

電動化に対する取り組みの一環として、過去3年の間に既に6,000人以上の従業員に対して、高電圧テクノロジーを扱うためのトレーニングを実施しました。高速充電の公共インフラ開発にも参画しています。

さらにアウディは、フォルクスワーゲン グループの開発リーダーとして、自動運転車両のための技術開発に力を入れています。

ミュンヘンに新たに設立した子会社、Autonomous Intelligent Driving GmbHは、都市の中で自動運転車両を動かすためのシステム開発に取り組んでいます。

このテクノロジーは様々なブランドのモデルに適用可能であり、今後の発展が想定されているロボットタクシーなどのモビリティサービスの基盤にもなります」と同社の広域戦略について述べた。

ニューモデル攻勢:2019年までにSUVを新たに2モデル、2020年までに電気自動車を3モデル、2018年までに主要後継モデルを導入予定

さらにシュタートラー氏は、「我々は自動車及びIT業界の強力なパートナーと協力関係を締結することも模索しています。

同時にハイウェイや地方道といった、それ以外の交通環境下で機能を発揮するアシスタンスシステムや自動運転システムの開発もさらに推進します。

新型Audi A8のお客様は、世界で初めて渋滞した道を60km/h以下で走行する場合に機能するレベル3の自動運転システムを体験することになります。

今後数年の間に、アウディはモデルラインナップを大幅に刷新します。

2017年には新型Audi A8に加え、Audi Q5やAudi A5といった主要な市販モデルの新世代バージョンが相次いで市場に投入されます。

なおAudi Q2の海外における販売地域も拡大する予定です。2018年には第2世代のAudi A7を投入し、トップエンドのモデルラインナップを強化します。同じ年に発売予定のAudi Q8は、市場で人気のSUVシリーズをさらに補完する役割を果たすことが期待されます。

2019年にはもう1台のニューモデル、スポーティでコンパクトなSUVモデルであるAudi Q4の導入が計画されています」と安定した新車投入戦略にも触れた。

続いてAUDI AG財務およびIT担当取締役のアクセル ストロットベック氏は、「昨年、アウディの全世界における販売台数は前年比3.6%増となる1,867,738台となり、新記録を達成しました(2015年:1,803,246台)。

この結果は、Audi Q7とA4モデルの好調なセールスが販売台数増加の最大の要因となりました。

アウディグループの売上高は、不利な為替環境にもかかわらず、前年比1.5%増加し、593億1,700万ユーロに達しています(2015年:584億2,000万ユーロ)」と同社の数字による裏付けを確認するように語った。

ディーゼル問題とタカタ製エアバッグ関連:特別損失18億ユーロを含めた営業利益は31億ユーロ、営業利益率は5.1%

加えてストロットベック氏は、「このように我々のビジネスが堅調であることは、特別項目を除外した営業利益率を見ても明らかです。

困難な状況及び多額の先行投資にもかかわらず、営業利益率8.2%という実績は我々が目標にしていた8~10%の範囲に収まっています。

2015年度の実績は8.8%、2016年における特別項目計上前の営業利益は48億4,600万ユーロでした(2015年:51億3,400万ユーロ)。

併せて特別項目に関してアウディ グループは2016年度に、米国におけるV6 3.0 TDIディーゼル問題を解決するための費用として16億3,200万ユーロの引当金を計上しました(2015年:2億2,800万ユーロ)。

また、タカタ製エアバッグ不具合の可能性に関連して、1億6,200万ユーロの特別項目を計上しました(2015年:7,000万ユーロ)。

結果2016年における最終的な営業利益は30億5,200万ユーロ(2015年:48億3,600万ユーロ)で、営業利益率は5.1%でした(2015年:8.3%)。

アウディ グループは、2016年度に30億4,700万ユーロの税引き前利益をあげました(2015年:52億8,400万ユーロ)。前年に対し減少しているのは、特別項目に加え、金融収支の黒字幅が減少したことも要因となっています。

好調な業績による成果は、アウディの従業員にも配分されます。総労使協議会と協議の上、インゴルシュタットとネッカーズルムの生産拠点で賃金協定のもと給与を受け取っている従業員には、平均して3,510ユーロのボーナスが支給されます(2015年実績:5,420ユーロ)。

これはアウディの関連子会社においても同様で、それぞれの業績に応じたボーナスが支給されます」と人材戦略に関わる取り組みについても畳み掛けるように述べた。

強固な財務体質:ネットキャッシュフローは21億ユーロ、ネット流動性は172億ユーロに増加

またストロットベック氏は、「我々アウディ グループは、自己資金のなかから将来のための先行投資を行っています。

2016年には34億ユーロの資本投資を行いながらも(2015年:35億ユーロ)、ネットキャッシュフローを21億ユーロまで増加させています(2015年:16億ユーロ)。

2016年12月31日時点のネット流動性は、172億ユーロに達しており(2015年12月31日時点:164億ユーロ)、会社の健全な財務体質の証となっています。

加えてアウディは、2016年夏に発表された新しい戦略をサポートするため、同年に『SPEED UP!』と呼ばれる一連の対策を開始しました。

我々はこのような方法で、2017年も全社一丸となって業務及びコスト効率を高めるための取り組みを続けていきます。

これは我々が利益目標を達成し、将来に向けた技術革新と投資を実行するための資金を確保する上で、必ず助けとなってくれるでしょう」と結んだ。

実際、アウディ グループは、今回発表した財務計画によると、今年総売上高の5.0~5.5%に相当する額の資本支出を予定している。

売上高に対する研究開発費の割合は、アウディが戦略目標に設定している6.0~6.5%のレベルを少し上回る。

一方、ネットキャッシュフローは、ディーゼル問題に関連する出費を踏まえても今年も確実に黒字になると想定しており、昨年のレベルを大幅に下回る見込みとしている。

結果、アウディ グループの販売台数と売上高は、さらに微増ながら上向く想定だ。加えて営業利益率については、昨年同様8~10%を目標にしており、投資収益率の予測値は、15〜18%になる見込みだ。