AGC旭硝子、半導体パッケージ用およびサポート用ガラス基板を開発


幅広いニーズに対応できる材料特性・サイズ・厚みをラインナップ

AGC旭硝子(旭硝子株式会社、本社:東京、社長:島村琢哉)は1月17日、半導体パッケージ用及び、製造工程でのサポート用のガラス基板を開発したと発表した。

次世代の半導体やMEMSデバイスのパッケージとして、Wafer Level Package技術が目覚ましい進展を遂げている。

なお同技術を背景としたFOWLP (Fan-Out Wafer Level Package)では、ICチップ上に形成された微細な再配線(RDL: Redistribution Layer)が、チップの外形より外側に拡張形成されるパッケージに注目が集まっている。

このFOWLPとは、半導体チップとプリント配線基板の間をつなぐ再配線層を半導体工程を使って作る「ウエハーレベルパッケージ」のバリエーションのひとつである。

結果、複数のチップ間を高密度な配線で形成する事や、 従来のパッケージと比較して大幅な小型・薄型化が実現できる。

より具体的には、半導体チップをウエハー形状の支持台に並べたものを外気に触れないように隙間なく包み、ウエハープロセスを使って再配線層を形成して切り取る技術である。

これによりパッケージ面積が半導体チップ面積より大きく、先に記載した通り、チップの外側まで端子を広げること(fan out)ができる。つまりチップ面積比で、端子数が多いような用途で活用できる点が大きなアドバンテージになるのだ。

ちなみにFOWLPそのものは決して新しいものではなく、半導体業界に於いては、大体2009年頃から量産が開始されている。

原理的にパッケージ基板を持たないことから、製造コストを下げ、かつパッケージを薄くできるため、特に搭載コスト面で厳しいスマートフォンのアプリケーションプロセッサーに適していると云われてきた。

この事から米Apple社は2016年9月に発売した「iPhone7」のアプリケーションプロセッサー「A10Fusion」に採用した。

しかし実は昨今、このFOWLP採用に精力的な構えを見せている自動車系企業があり、それはトヨタ自動車傘下のデンソーだ。

同社は自動運転技術開発の場面で、車載プロセッサーICの数が増殖するなかで、可能な限り限界までコストを下げたい狙いがあるようだ。

このような背景を受け、既存のハンドヘルドデバイス対応を超え、自動車への広域応用を視野にWafer Level Package技術でガラスウェハを応用するニーズが高まってきているのである。

しかしシリコンウェハとガラスウェハを直接貼合する場合、双方の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion: CTE)の違いによる反りをなくすため、シリコンと完全にCTEが一致したガラスウェハが求められる。

加えてFOWLPでは、シリコンウェハの再配線層や、樹脂等のCTEの異なる材料を同一ウェハ上で接合する工程が存在している。

しかも、それらはデバイス毎に組み合わせやパターン形状が異なるため、個々に最適なCTEを持つガラス基板が求められている。

さらに一般的なガラスに含まれるアルカリ成分は、製造プロセスやデバイスを汚染する恐れがあるため、アプリケーションによっては、無アルカリガラスも求められている。

そこでAGC旭硝子は、これを受けて新たなガラス基板を開発。以下のようなラインナップを取り揃えた。

  • 無アルカリガラス。
  • 常温から約 250℃までの範囲でCTEがシリコンと完全に一致したガラス。
  • 3ppm/℃から 8ppm/℃まで、幅広いCTEに対応したガラス
  • アルカリを含むガラス。
  • 更に高いCTE12ppm/℃まで対応したガラス。
    形状については通常の真円のウェハに加え、長方形や正方形のパネルにも対応が可能。
  • 基板厚みは0.2mmから、2mmまでを取り揃えた。